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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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餐後危機

 雲の皇帝に鏡を向けようかとも思ったが、そのまま急降下し鏡面に突っ込まれてはたまらないから、できなかった。

 とにかく、まずは何かしらの動きが欲しかったが。その動きの機会はなかなかないように思われた。

「……仕方ないわ。世界樹の木陰に行きましょう」

 香澄が言えば、リオンとコヒョはふたり肩を寄せ合って世界樹の木陰に身を隠し。それを守るように香澄が付き添い。

 源龍と羅彩女も、得物を構えたまま素早く木陰に隠れた。雲の皇帝は浮かんだままで動かない。

「いったいなんだこりゃ?」

 と言いたかったが、その前に、

「気を抜いていいのか?」

 などと、とんまなことを問い。羅彩女は苦笑し、香澄は微笑んで「いいんじゃないの」と頷いて。そこで、やっと、

「いったいなんだこりゃ?」

 と、つぶやいた。

 そこで一気に気が抜けてゆくのを禁じ得なかった。緊張感もいつまでもたもてるものではない。

 雲の皇帝は空にぷかぷか浮かぶばかりで、何の動きもない。じらせて疲れさせる作戦かと思われたが。この様子を見ると、そうでもないようだ。

「あーやってらんねー」

 源龍はどさりと打龍鞭を置いて、腰を下ろして背中を世界樹の太い幹に預けた。結局、自分たちはここに置き去りにされて、手持無沙汰にされてしまったのか。

「干し殺しにするつもりなのかねえ」

 羅彩女も源龍のとなりに腰掛け、頭上の茂れる枝葉を見上げた。少し離れたところでリオンと香澄、コヒョの三人で身を寄せ合って地面に腰掛け、背中を太い幹に預けた。

 なんだか変にのどかで、拍子抜けさせられて仕方がなかった。

 世界樹は黙して語らず。

 リオンは青銅鏡を覗きこみ、コヒョは通心紙を手にしてマリーと連絡を取ろうと試みるが、上手くいかない。

 香澄も仕方がないとばかりに背中を太い幹に預けて瞑想状態だ。その様はまるでおとぎ話に出そうな人形のようだった。

 ふと、リオンは立ち上がって。青銅鏡が飛び出たうろを覗きこんだ。

 すると、

「うわーーーーー!!!」

 大きな悲鳴が上がった。なんと洞が大きくなって、リオンは吸い込まれてしまったではないか。

「リオン!」

 咄嗟に香澄は跳躍し、手を伸ばすが、すんでのところで間に合わなかった。それどころか、その勢いのままに香澄も洞の中に吸い込まれてしまったではないか。

 他の面々はその様を見て呆気に取られて、それぞれも咄嗟に洞の前まで来たが。

「……」

 さすがの源龍も減らず口を叩かず。ままよと、自ら洞の中に飛び込むではないか。羅彩女もコヒョも、ええいと自ら洞の中に飛び込んだ。


餐後危機 終わり

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