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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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餐後危機

「何もかも気まぐれで、やあねえ」

 龍玉が世界樹に向かい不満たらたらに言う。虎碧も同じように不満を禁じ得ないものだった。マリーは母親として、皆の仲間としてそれを察して、申し訳ない思いだった。

 リオンも同じく、なんだかもにょもにょするものを覚えざるを得なかった。

 龍玉の青龍剣せいりゅうけん、虎碧の赤虎剣せっこけんも、世界樹から与えられたものだ。業物ではあるんだろうが、上空の雲の皇帝を相手にどこまで効くのかわからない。

「畜生、来るなら来やがれ!」

 源龍は忌々しく吐いた。あの鋼鉄の龍がなくても、打龍鞭がある。羅彩女も軟鞭を構える。しかし、それらをかき分けて香澄と聖智が一番前に進み出る。

 七星剣はきらりと光り、香澄の手に握られて。主とともに戦う意志をみなぎらせるように紫色の七つの珠もきらりと光る。

 聖智も緊張した面持ちながら、雲の皇帝を睨む。

 語り合ういとまなどなかった。が、ふたりが主として戦う意志は感じられた。

 雲の皇帝は上空に雲として浮かぶばかりで、こちらを見下ろすばかり。襲い掛かろうとする気配はない。地上の様子を眺めて楽しんでいるのかどうか。

 と思えば、大口を開けた。口から出るのは叫び声ではなく、なにやら黒い霧のようのものだった。

 黒い霧が地上に降り注ぎ、辺りを覆って視界を遮る。

「くそ、こんなのばっかりかよ!」

 源龍は打龍鞭を握りしめるも、得物の威力を発揮出来ずにいたぶられることにどうにもならない気持ちだった。羅彩女も貴志も、龍玉に虎碧も、聖智も、リオンにマリー、香澄とコヒョも、世界樹の意図をはかりかねて困惑を禁じ得なかった。

「いっそのこと、死なせてもらった方がまだましだ!」

 たまらず聖智が叫んだ。が、咄嗟に、

「それは違うわ!」

 と、香澄が返した。

「何があっても生きる、生きて生きて、生き抜くのよ」

 七星剣を握りしめるほどに、剣身の紫の七つの珠が光り輝き、辺りを覆う黒い霧の中でも、それがはっきりと見え。闇夜に紫の北斗七星が浮かんでいるようであった。

 貴志も穆蘭七星剣の剣身を見れば、同じように青い七つの珠が黒い霧の中光り輝いていた。

 しかしその七星剣を鞘に納めて、我知らずにマリーに寄り添った。不安そうに怯えている面持ちが、かすかに見えて、それで、咄嗟にだった。娘の虎碧も身を寄せて付き添っている。

 香澄も七星剣を鞘に納め。龍玉と虎碧も、それぞれの得物を納剣した。この視界不良の中で、不意の同士討ちによる斬り合いを防ぐためである。

 自然と彼ら彼女らは輪を作り。その中にマリーとリオン、コヒョが隠れるようにいる格好となった。

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