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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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餐後危機

「落ち着け!」

 むしろ庁舎内の雰囲気を感じ取って、瞬志スンチ一喝をくれた。

 一瞬にして、揺れる雰囲気が引き締まって。不穏さが掻き消された。

(さすが兄上!)

 志明チミョンは感激した。李家イけの五人兄弟で一番期待されて、期待に応えたきただけのことはあった。

 という時。

 ぼう、とくうが不穏な音を発して。瞬志はすぐに腰に佩く剣を抜き放った。志明は腰を抜かした。

 なんと、広間の真ん中に謎の丸い物体が姿を現す。何もなかったはずのところから、徐々に姿を現して、半透明から完全な黒く丸い物体へと変化して。

 まるで広間に穴が浮かんでいるかのようにも見えたが。

 それは確かに穴のようで。

 ぽん、ぽん、ぽん、と穴から人が飛び出した。

 弟の貴志フィチに、金髪碧眼の女性のマリーに、その娘の虎碧こへきと連れ合いの龍玉りゅうぎょくに、にっくき仇であったはずの南達聖智ナダル・ソンチ

「きゃあー」

 マリーは思わず悲鳴を上げながら穴から飛び出て、というより放り出されて宙に浮き。貴志が宙に浮いた状態ながらも咄嗟に抱きかかえて上手に着地して、そっと丁寧に下ろして。

 それに続くように、龍玉と虎碧、聖智もうまく受け身を取って着地した。

「貴志! 一体これはなんだ、説明せよ!」

 瞬志が剣を握ったまま一喝すれば。貴志が腰に佩く剣が、なぜか、ぽんと飛び出し。音を立てて床に落ちる。まるで貴志に、これを手に取って戦えと言わんがばかりに。

「ああ、いえ、その、なんと言うか」

 貴志は慌てて床に落ちた穆蘭ぼくらんの青い珠の七星剣を拾って鞘に納めた。

 穴と言えば、すうとくうに溶けるようにして消えた。

 その間に、さっと龍玉が前に出て、瞬志と対峙し睨み合い。一触即発の雰囲気となった。

 虎碧は貴志とともに母のマリーに寄り添い。聖智も、余計なことはせずに龍玉の後ろで静かに控えている。

「まあまあ、兄上。ここは穏便に」

 志明が助け舟を出す、というわけでもないだろうが、瞬志にそう言い。言われた瞬志は弟をひと睨みしたが。貴志らの様子を見て、敵意はないようだと、頷き。剣を鞘に納めた。

 龍玉から気合が迸り出るのが感じられて、下手をすればひと騒動となりそうである。瞬志も穏便に済ませられるなら済ませたいから、まず自分が納剣したが。果たして、龍玉も気合が落ち着き、一歩下がった。

「ゆっくり話をしたいけど、そんな暇はなさそうだよ」

 と、龍玉は言った。

「どういうことだ」

 瞬志が問おうとしたまさにその時。

 くうを揺るがすような轟音が轟いた。何事だと、一同驚き。役人や召使いらの中には悲鳴を上げて、腰を抜かしへたり込む者もいる有様だった。

「あの阿呆らがまた来たんだよ!」

 と龍玉は吠える。

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