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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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慶群帰還

「うふふ」

 龍玉は慌てる仕草を見せておどけて、聖智はその時のことを微笑んで思い出し。虎碧も思わず笑みがこぼれた。

(本当に改心したんだな)

 貴志は喜ぶとともに驚きも禁じ得なかった。人はここまで変われるのかと。

 ともあれ、一同がいる広間は朗らかな雰囲気に包まれて。皆、心地よく海鮮チゲに舌鼓を打った。

 そして食った。食った。食いまくった。用意された具も、もうなくなろうとしている。

 ふと、湯気があたりを覆っていた。よく煮込まれたチゲから勢いよく湯気は立っていたが。それはまるで霧のように、一同を覆ってしまっていた。

「ん?」

「あれ?」

「ここは……」

 源龍と貴志、羅彩女は箸を持ったまま、周囲を見渡す。他の、龍玉と虎碧、聖智も橋を持ったままぽかんとしている。

 香澄とマリー、リオンにコヒョは、

「あらら」

 と、いたずらっぽく、少し苦笑う。

 なんと、一同はチゲを囲んだままだだっ広い草原に、いつの間にかいさせられていた。で、向こうには大樹が見え。その大樹のそばには、子どもたち。

「おうおう。またこれかよ」

「人が気持ちよく食事してる時に」

「せめて食事が終わってからにしてほしかったなあ」

 源龍と羅彩女、貴志は驚きつつも、もう慣れたものだ。冷静に箸を置き。足元に得物があるのを見て、それを手にする。

 源龍と羅彩女などは、服も変わって、いつの間にか鎧を着せられている。他の面々は用意された暁星の服のままだ。それぞれの得物はある。

 口を拭って。席を立ち。臨戦態勢のまま、一同顔を見合わせて、世界樹へと向かい歩き出す。

 一方、志明たちは大騒ぎである。広間からチゲごと一同がいなくなっているのである。誰も外出していないのに。

「神隠しだ!」

 と、上を下への大騒ぎである。

「ううむ、これは」

 志明は広間で眉をしかめて、つとめて冷静に振る舞おうと頑張る。

 こんな時こそ元煥に相談したかったが、あいにく来るなと伝えられていて。どうしたものかと悩みに悩んだ。そんな代官の様子を見て、部下らの間に動揺が広がる。という時。

李瞬志イ・スンチ将軍がいらっしゃいました!」

 という報せがあって、志明は尋ねてきた兄を迎えに、もとい飛びつくように出迎え。早口でかくかくしかじかと事の次第を伝えた。

「そうか。そんなことが」

 ともに広間にに向かいながら話を聞いた瞬志は、これまた妖異が起こったものだと眉をしかめた。

 で、広間に着き、がらんどうになっているのを見て、また眉をしかめる。しかし動揺は見せなかった。


慶群帰還 終わり

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