慶群帰還
いずれにせよ、貴志はこの面々の中で軍師扱いで頼りにされていた。
「マリーさんと、虎碧ちゃんは、ここに残ってもいいかもしれません。兄さんには、僕から話しておきますから」
と、言った。さらに、
「源龍。思ったことがあったら、率直に言ってほしい。僕らの間に遠慮は無用だよ」
とも言った。源龍はやや惑う顔を見せる。
「なんだよ。人が気を遣ってるのに」
「王様の前ならそれでいいけれど。一緒に戦う仲間同士でそれやると、かえって誤解をさせてしまうこともあるよ」
「ふーん。ややっこしいな」
「まあね」
その反応は無理もないと、貴志は苦笑する。それならそれでと、
「疲れてるなら、無理しねーで休んでもいいんじゃねーか」
と、改めて言った。
ほう、と感心した表情を見せたのは龍玉。
「貴志さんも、一緒に残ってあげなよ」
などと言う。どうしてと、今度は貴志が惑う顔を見せた。
(もう、狐の気遣いには気付かないんだねえ)
「それがいいかもしんないねえ」
「おや、珍しく意見が一致したわね」
龍玉はややにやけた顔を羅彩女に見せた。
「別にあんたに合わせたわけじゃないよ。ここにいるなら、貴志の坊ちゃんがいた方が何かと便利だろ、って思っただけだよ」
「まあ、あたしもそうだよ」
「オレも、それがいいと思うぜ」
源龍も加わる。言われる貴志はいよいよ戸惑う。
(高貴の家に生まれるってのも、大変だな)
言ってる方は気付いていないようだが、貴志は責任を負わされているのだ。もちろん、負う気はあるのだが。彼らはその責任が、権力や家柄で何とか出来ると、無意識に思っているのかもしれない。
(これは危ない考えだ!)
一瞬、迷ったが。貴志は思い切って、
「待ってください!」
と、話に加わった。
「僕は確かに王族で、五男坊でも宰相の子ですが。この切迫した時代は、責任は、権力や家柄で何とかなるわけでもありません。そこは勘違いしないでほしいと思います」
「……あー。言われてみりゃ、そうだねえ」
龍玉や羅彩女は苦笑し、自分の無意識的な無責任な貴志への期待を恥じた。しかし源龍は違った。
「それでも、利用出来るもんは、利用した方がいいだろう」
などと言う。貴志は思わず、ずっこけた。
(僕も、相手に変な期待をしすぎたか)
しかし源龍らしいと言えば源龍らしい。
この様子を、香澄とリオン、コヒョは黙って見守っている。マリーと虎碧の母子も、何をどう話せばよいのか、惑って無言のまま。
これも、異界に行かされるかもしれない、という思いからだった。己の力や、ましてや責任ではどうにもならない、問答無用で異界に行かされ、戦いを強いられるということ。




