慶群帰還
「もう、それよ、それ」
「いい気なもんだねえ」
「ははは」
虎碧は反応に困り、羅彩女は苦笑し、龍玉はあっけらかんと笑い。聖智はぽかーんとしてしまって。香澄とマリーはそれを微笑んで眺めて。
それぞれ身体をぬぐって服を着た。
さて男湯。
貴志は湯船にゆっくりつかりながら、瞑想するように目を閉じていた。
リオンとコヒョは湯船につかりながら、雑談にふけっていた。
「これからどーするんだろーねー」
「さあねー。世界樹次第だねー」
などと、これからのことを考え、話すも、結局は世界樹次第という結論に達した。
「ふう」
思わず息が漏れる。一時的なこととはいえ、ゆっくりゆったりと、心を癒し、落ち着けられるのは、ありがたいものだ。
ふとふと、辰は大京の貧民窟を思い出した。担々麺売りを求めて入り込んで、娼婦に諫められたり、ならず者に襲われたりしながら、羅彩女の営む担々麺屋に辿り着いて。
そこから、今に至る冒険を、強いられた。
そう、強いられたものだった。夢の中で香澄に仕留められて以来、自分は生きているのか死んでいるのかわからぬまま。
こうして湯船につかっているのも、夢か現か、さだかならぬ。
「きゃはは!」
「あーやったなー!」
途端にリオンとコヒョの大声がし、湯がばしゃばしゃ弾く音もする。ふたりはふざけて、湯を掛け合っているのだ。
何事かと思い目を開け、なんだと苦笑する。やっぱり子供だなあ、と。
まあもっとも、コヒョの元の姿は……。考えないようにした。
「僕は出るよ」
貴志は湯船から出る。リオンとコヒョも、
「僕もー」
と、続いて出た。
服を着て、広間に戻れば。他の面々も戻って、思い思いの場所に座り、雑談をしたり、瞑想をするように静かにしている者もいた。
龍玉は尻尾も耳も隠して、人間然としていた。
「……」
貴志は、まさに静かに瞑想をしているように座り込む聖智に目をやった。李家の召使いを殺した、憎き仇でもあるのだが。こうして見ると、彼女が本当にそんなことをするようには見えなかった。
瞑想をしているというなら、源龍もそうだった。かつては稽古に付き合わされたりして、面倒な思いもさせられたが。珍しく静かにしている。彼もらしくもなく疲れているのだろう。
「……」
貴志は何かを考えて、兄の志明がいる執務室に赴き。そこから戻ってきて。
「お寺に行ってくるよ」
「オレも!」
言うや、源龍はぱっと目を開け、打龍鞭を押っ取って素早く立ち上がると、貴志に並んだ。
羅彩女もそれに続く。
お寺とは、光善寺のことだ。




