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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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慶群帰還

 余計なことを言ったか、雄王は慌てて口をつぐんで咳払いをした。あやつとは、光燕世子クァンヨンセジャのことだ。聖智は目覚めとともにひどく胸が痛むのを禁じ得なかった。

「そんなにいいもんかねえ」

「しっ。それこそ余計な一言だよ」

 源龍の言葉を羅彩女は慌てて諫める。

 龍玉と虎碧は詳しい事情を知らないので、その意味がよく呑み込めない。

「お目覚めになりましたか!」

 わざとらしい大声で志明が広間に来た。丁度志明も目覚めて、起き支度をして広間に赴いたところだったが。その、王様の余計な一言も聞こえてしまった。

「お食事をご用意させました!」

 言うや、召使いが盆に乗った軽食を運んできた。茶は飲みやすいようにぬるめになっていた。

 他の者はともかく、王様に盆を運ぶ召使いは固まってしまった。広間の面々は皆腰を下ろしている。となれば、盆を運ぶ者は王様を見下ろすことになり、不敬ではないかと恐れてしまうのだ。

 香澄は素早い動作で召使いから盆を受け、代わりに運んだ。召使いはひどく香澄に感謝したものだった。

(王に生まれるとは、こういうことか)

「世話になるな」

 と、雄王は香澄から盆を受け取りながら、志明に言った。

 食事が行き渡り、召使いらも去り。それぞれが食事を口に運んだ。地べたに座って、王様や宰相、辰の公主もである。

 ゆっくりしたいところだが、すぐに都に戻らねばならない。このような異変が起こっているのだ。王宮で指揮を執り、事態の把握、収束をさせなければ。

 その旨を志明に伝えると、

「馬車の用意をしてございます」

 と言う。

「うむ」

 それだけ言うと、雄王は飯を掻き込み、茶で流し込み。すっかり平らげると、すっくと立ち上がって。

「では」

 一同に笑顔を振りまき、足早に広間を出てゆく。それに太定、劉開華、公孫真も続く。

「貴志、お前も王様や公主と同行するんだ」

「え?」

 志明の言葉に、貴志はぽかんとする。

(李家の者がなんたる自覚のない!)

 志明は呆れて貴志に怒鳴りつけようかと思った矢先、

「かまわぬ」

 と、雄王の声がした。

「貴志はその者らとともにおるほうがよい」

「しかし」

「公孫真もおれば、公主もおる。それで充分」

「ふぇ?」

 志明こそ変な声が出る。公孫真はともかく、劉開華を護衛のように言うとは。確かに武芸達者で、覚えも良く素質もあることから青藍公主せいらんこうしゅのふたつ名があるのは聞いたことはあるが。

 もちろん、護衛の兵も付けるのだが。

「ゆっくり話す暇はない、貴志はその者らとともにおるほうがよい。……予は行くぞ!」

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