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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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慶群帰還

「実際に戦ったのは、彼らなのに」

「……」

 警護の兵は要領を得ず、何も言えなかった。それを横目に、雄王らは一階に下り、広間にゆけば。

 貴志や香澄らは、毛布にくるまって雑魚寝をしていた。聞けば、ずっと寝ているという。よほど疲れていたのであろう。

「この者らにこそ、ゆるりと休める個室が必要であった」

「私もそう思います」

 雄王の言葉に劉開華も頷いた。それから、ふたたびの眠気。一旦目覚めたものの、疲労は思った以上に濃く。まだまだ休みが必要なようだ。

「部屋に戻るのも面倒臭い。ここで寝るか」

 雄王は広間の真ん中でごろんと横になり、召使いが慌てて毛布を持ってくる。劉開華も、香澄のそばに横わたって、そのまま寝た。公孫真も太定も、同じように雑魚寝をした。

 慌てた召使いが志明を叩き起こし、事の次第を伝えれば。

「……!」

 志明は絶句した。国王を雑魚寝させたとあらば、伏魔殿の揚げ足取り好きに何を言われるかわかったものではない。国王がよいと言ってもだめだというのが、この手の連中のやり口なのだ。

(……。しかし、世に乱避けられぬは決まったようなもの。覚悟を決めるしかあるまい)

「お好きなようにさせておけばよい。王様ではないか」

 つとめて穏やかな笑顔でそう言い。召使いたちを安堵させた。

 それで、自分はどうするのかというと、このまま自室で休むことにした。まだまだ疲労は濃く、勤めは果たせそうになかった。起きてから、確実に自分の役目を果たそうと思えばこそ、確実に疲れが取れる方法を取るのだ。

 結局、そのまま夜が過ぎた。

 早暁。香澄が静かに目を開けて、上半身をゆるりとした動作で起こせば。それに続くように、他の面々も目覚めだし。源龍は大あくびをしながら、「ああ、よく寝た」と満足そうに言い。

 貴志も小さくあくびをしながら、ひと息ついて。それから、

「王様!」

 と、素っ頓狂な声が出た。それから、

「父上!?」

 とも続く。羅彩女は劉開華を目にして、

「あら、お姫様も」

 と不思議そうにし。

「公孫真のおやっさん、いたのか」

 源龍は背伸びをしながら呑気そうに言う。これが王侯貴族的に異常事態だということに気付いていないようだった。

 聖智は、目覚めると同時に石のように固まった。

 龍玉と虎碧も少し驚いた様子を見せ。香澄とマリー、リオンにコヒョは、微笑んでいる。

 雄王はそんな一同を見回し。

「おはよう」

 と、呑気に言う。それから、

「あやつも、このような友がおれば。いや、そのような友と出会う機会を作ってやれなんだ親の不明か」

 思わず、ぽろっと出た。

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