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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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慶群帰還

 瞬志も行動を共にする者はいるが、将軍の部下としてであって、仲間としてではない。もちろんそこには結束力や団結力はあるが。

 仲間との旅はそれとはやはり違うのであろう。個性的な面々で、ともすれば何かの拍子で仲違いしてばらばらになってしまいそうなものだが。それらがよく一緒にいられているものである。

「それこそ人の気も知らねえってやつだぜ」

「ははは。許せ」

 源龍に言われながらも、瞬志は笑いを堪えなかった。素直に面白おかしかったのだった。

 雄王と太定、志明、南達聖智ナダル・ソンチは何も言わず様子を見て。貴志に羅彩女、龍玉りゅうぎょく虎碧こへき、それに劉開華りゅうかいか公孫真こうそんしんは互いに目配せしながら微笑み合った。

 その様子を、香澄にマリー、リオンとコヒョは微笑んで見つめていた。

「あ、将軍の船だ!」

 港に近づくにつれて、亀甲船の周囲に他の船、舟が集まってきて。その雄姿を見つめていた。

「将軍!」

 先に寄港した船からの報告があったのだろう。瞬志の部下が小舟に乗って亀甲船にやってくる。部下たちは亀甲船に色んな人たちがいることに不審なものを覚えたが、近づくにつれて顔が青ざめてゆく。

 それもそうだろう、国王と宰相までいるのである。彼らは謁見を許されてその顔を拝したことがある。

「王様? なぜ!」

 雄王は瞬志らとともに甲板上にいるが。

「王様、ここは隠れていた方がよいようです」

 王様がいる、ということで大騒ぎになりかねない。ともすれば、そこから混乱もきたしかねない。

 わずらわしいことだが、混乱を避けるために雄王と太定、劉開華と公孫真は中に隠れることにした。

「滅多なことを口にせず、黙ってろ!」

 瞬志は小舟の部下に命じれば、「はい!」と威勢の良い返事があって、それから余計なことは言わず、黙りこくった。

 不思議なことに、亀甲船は誰も操船していないのに、風や波に運ばれるようにひとりでに寄港した。部下も小舟のまま、その様子を見守っていて。なんでだ? と驚かされていた。

 ともあれ、亀甲船は寄港した。多くの人々が集まっていた。瞬志の亀甲船が忽然と消えて騒ぎになっていた、それが戻ってきて、それをひと目見ようと。

「港は立ち入り禁止だ! 出てった出てった!」

 混乱を避けるために、港詰めの役人や瞬志の部下らが人払いをする。

 集まった人々は払われて、一転して港からは一気に人が減って静かになった。馬車も用意されていた。

 誰も余計なことは言わず、まず亀甲船から素早く雄王と劉開華が下りて馬車に乗り。太定と公孫真が続いた。

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