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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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鋼鉄激突

「なに、オレがおとりだと!」

 貴志の助言に対し、源龍は戦士としての矜持を傷つけられた気分になったようだった。

「ちょっと、気を逸らさないで!」

「うおおッ!」

 源龍はあらぬことで気を逸らしてしまい、その隙を突かれて阿修羅の放った火焔を受けてしまった。

 間一髪、受けたとはいえ咄嗟に避けて。撫でた程度で済んだようだが。

「あちい!」

 室内の温度は一気に急上昇し、蒸し暑くなり言いようもない不快感に襲われる。

「もう仕方ないね!」

 羅彩女の赤い鋼鉄の星龍は、阿修羅を引き受けて。源龍は熱を冷ませるために一時離脱せざるを得なかった。

 必死の思いで風を切れば、どこからか風が入り身体を涼やかにしてくれる。

 どうにか熱さは和らいで、源龍は戦線復帰する。

 それまでの間、羅彩女が阿修羅を引き受けていた。阿修羅の火焔、拳や脚を巧みにかわし。なるだけ間合いを取って、隙を見て流星を放ち。時にかすることもあった。

「なんだ、オレがいなくてもいいみたいじゃないか」

 などと言う源龍ではなかった。

「さっきの仕返しだ!」

 風を切り阿修羅に突っ込みざま、流星を放つ。しかし狙いが甘く、なんと羅彩女の赤い鋼鉄の星龍に当たりそうになり。それは通心紙を通じても見えて、見ている面々も固まってしまう。

 間一髪、羅彩女の星龍は流星を避けて。流星は阿修羅の眼前に迫った。

「うおお」

「ひゃああー」

 人狼と画皮は間抜けな声を出し、衝撃に耐えた。ということは、当たったのである。

「まぐれ当たりか……」

 貴志は苦笑しながらつぶやく。香澄もさすがに同じ様に苦笑するのを禁じ得なかった。

「あやつもでたらめな」

 瞬志のように苦笑もせず眉をしかめている者もいる。あやうく味方を損ねるところだったのでもある。

 しかし幸いなまぐれ当たりでも、鋼鉄の阿修羅を倒すには至らず。

「なんだ、これしき!」

「倍にして返してやるもんね!」

 人狼と画皮は叫び、鋼鉄の阿修羅の諸手を広げて突っ込む源龍の星龍と真っ向から向き合った。

「おもしれえ!」

「馬鹿、突っ込むんじゃないよ!」

「よせ、誘ってるんだ!」

 羅彩女と貴志は叫んで諫めたが、聞く源龍ではなかった。六本腕を広げる阿修羅に体当たりを食らわせた。と思ったら、衝撃ののちに、身動きが取れなくなってしまった。

 捕まったのだ。源龍の鋼鉄の星龍は抱きしめられるようにして捕まってしまったのだった。

「くっそ、離せ!」

 しまったと思ったが、どうしようもない。羅彩女は咄嗟に流星を放とうとするが、阿修羅は源龍の黒い鋼鉄の星龍を赤い鋼鉄の星龍に見せつけ、盾代わりにする。

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