鋼鉄激突
さて、またしても時とところは変わる。
他の者たちとともに、空から王宮に降りてきた源龍と羅彩女であったが。爆発する鋼鉄の火龍から飛び出た人狼と画皮の中身を追いかけて、塀を飛び越え屋根に飛び乗り、どこかへと行ってしまった。
番兵は何事かと驚き、槍を構えて見上げるものの。あっという間に見えなくなってしまった。
人狼に画皮、それを追う源龍と羅彩女の身体能力は高く。人並外れた跳躍力を見せて、彼方へと消え去ってゆく。
勢いよく王宮から飛び出て、漢星の市街地を駆けてゆく。
王宮に残った者たちに思いを馳せることはなかった。ただ、追うことだけがふたりの心を占めていた。
文句も言われるかもしれないが。
(あいつら仕留めりゃ文句ねえだろ!)
ということであった。
人狼と画皮は狭い路地裏に逃げ込んで、源龍と羅彩女もそれに続いた。
その路地裏の狭いぼろ小屋に人狼と画皮は駆け込み、源龍と羅彩女も続いた。
中は真っ暗だ。
「まだどこかへいかされっぞ!」
「今度はどんなところだい?」
源龍と羅彩女は足を踏みしめ立ち止まり、それぞれの得物を構えた。
すると案の定、雰囲気が変わってゆくのを感じた。
中は真っ暗で変にひんやりすると思えば、生暖かいそよ風が吹き、ふたりを撫でてゆく。
振り返ってみれば、通ったはずの出入り口がない。四方八方真っ暗である。足に感触はあるので、地面としたものはそのままのようだ。
「しつこい奴らだ! 今度こそ血祭りにあげてやる!」
「お前らの皮で、あーんなことやこーんなことまでやっちゃうぞ!」
どこからか人狼と画皮の声が響く。
(香澄に、やることがあると言われたが、これがそうなのかよ!)
考えてみれば、勘弁してくれと言いたくなる面倒な話である。しかし、なぜか源龍の身体は熱い血が我が身を熱するような感触を覚えていた。
求めていた。
戦いを。
寝ること食うこと女とまぐわうことよりも、戦いを求める己がいた。
羅彩女はそんな源龍を察していた。
どうして源龍に強く惹かれるのか自分でもよくわからない。それ以前に、なぜ一緒にいることになったのかも、記憶になく。気が付けば、であった。
しかし、何か強く惹かれるものがあった。
それは女として男に惹かれるのか、それとも結局は好奇心なのかは、わからないが。ただ、強く惹かれた。面白いつまらないなどといったことを超越して。
ともあれ、今の状況。
真っ暗闇だ。
ただ地に足は着いているから、宙に浮いてはいないようだ。
やがて、周囲が徐々に白みはじめてきた。
「?」
身体の感触がおかしい。




