遇到公主
劉開華は輝く瞳で一行を見つめていた。
「それに、私たちも子どもをつけてもらったわ」
「子どもを?」
源龍が怪訝な顔をするのを、世界樹の子どもはにっこりして、
「おっと。それは、会ってからのお楽しみ」
などと、何を思ってかもったいぶることを言う。
源龍も子どもに無理に突っ込んでも仕方ないと観念した。
「と、いうことだね」
子どもは得意げに皆に笑顔を見せる。
「まったく、世界樹からは逃げられないってことだね。仕方ないねえ、あんたらを信じるよ」
「かたじけない!」
「ありがとう!」
羅彩女はため息をつき、観念して言い。主従にして師弟のふたりは跪き厚く礼を述べて、
「話が決まれば、先に進みましょう。こちらへ」
と、公孫真の案内で地下の廊下を進む。
「この廊下は万一のための逃げ道として極秘に作られたのよ。わずかの者以外は知らないわ」
「地下にこんな廊下をつくるたあ。まったくすげえな」
源龍と羅彩女は感心するやらあきれるやら。貴志と香澄は無駄口をたたかずふたりについてゆき、子どもはにこにこしてついてゆく。
先の部屋は、万一のための待避所で。扉の鍵は特殊なつくりで。皇族のみが持つ鍵でなければ開けられないという。
途中でそれぞれが互いに改めて自己紹介をする。源龍と貴志は香澄に仕留められて、そこから夢とも現ともつかぬことになったと語る。
羅彩女は源龍と貴志のふたりと同じような感じで、世界樹に導かれて、やはり香澄に仕留められて。そこからこうなったと語る。
劉開華と公孫真は話を聞いて、香澄を思わずまじまじと見やってしまった。
「それで、転生者って言うのね……」
「いやだ、そんな目で見ないで」
香澄はおどけて劉開華に言う。
「転生すると強くなれるよ、おひとついかが?」
子どももおどけて言う。劉開華と公孫真は苦笑いをしながら、遠慮しておくと言った。
しかし、転生すると強くなれるという。その手筈はどうあれ、どうしてそうなるのか。世界樹とは何か。なぜ世界樹が導くのか。疑問だらけなのだが、子どもは笑って、「わかんない」と言って誤魔化すばかり。
それに、この子どもも、何者なのだろうか。
「そういえば、貴志さんは暁星の方よね。じゃあ、十七少年団のことは……」
「あー……」
劉開華の突然な問いに、貴志は苦笑しながら頷く。
「もちろん存じております。お好きなのですか」
「ええ、とっても! 使節団との宴で彼らの歌や踊りが披露されたのを見て、それから虜よ!」
暁星には美男美女をそろえた王宮付きの歌舞団があり、それぞれの団には個別に名前も付けられていた。その歌舞団は使節団とともに辰入りし、宴で歌や踊りを披露することもあった。




