突撃流星
「はっ。これは何事でございましょうか」
忠誠を誓う王から、仇である邪教教主の女までが揃い踏みである。そして、王がそれらをまとめているようであった。
「声を荒げず、静かに座れ」
と命じれば、一同静かに腰を落ち着け車座になる。聖智のそばには香澄が寄り添う。聖智自身も、身を切られるような思いだった。李家に仕える者たちを殺した咎がある。
貴志と瞬志が戸惑いつつも、落ち着いた対応をしているのは、有り難い事であった。
それに加え、辰の公主にまで危害を加えようとしていたのだ。何と大それたことをしたのかと、こうして顔を合わせて、改めて身も心も八つ裂きにされるような罪悪感を感じて止まなかった。
ともあれ、今の、あきらかにおかしく異常な状況である。
亀甲船は宇宙空間を遊泳していた。どこへゆくのか。あまりにも広い宇宙ゆえに、東西南北の感覚がなくなってしまった。
(あいつがいないな……)
あいつとは、源龍のことである。もうひとり羅彩女なる女もいたが。そのふたりがいない。何かで別れたのか。貴志に聞きたいところであったが。そんなことより、優先すべきことがある。
「王様、立ってよろしいですか?」
「うむ、よいが。どうした」
「外に出て方角を確かめたいと思います。星を見ればある程度はわかりますから」
「なるほど、あまりのことにそのような基本すら忘れてしまっていたな。いやはや、我ながらまだまだ未熟よ」
雄王は膝を叩いて頷き、予も行こうと、立ち上がり。瞬志も続いて立ち上がった。太定と志明と貴志も立ち上がり。リオンとマリーとコヒョも釣られて立ち上がった。
「私も」
と劉開華と公孫真も立ち上がった。龍玉と虎碧は顔を見合わせて、自分たちもと立ち上がる。
聖智はというと、座り込んだまま、顔が真っ青である。天君としての威厳もあったものではなく。香澄が気遣い、そばに付き添っている。
「王様、休みたい者は休ませてもよろしいかと」
太定は、特に聖智の様子を見て進言する。雄王もさほど気に留める様子もなく。そうだなと言って、先頭に立って甲羅の外に出ようとする。
聖智は休む。一旦は立ち上がった香澄であったが。
「私はこの人のそばにいます」
と言う。
「そうしてやれ」
雄王は香澄を一瞥してそう言い。甲羅の横っ腹から出る。扉を開ければ、甲羅と船縁の間は廊下のように人が歩ける空間があり。甲板を踏みしめ舳先の龍頭の物見の台までゆく。そばには瞬志が付き添う。
物見の台はさほど広くなく、人がせいぜい三人までしかいられない。万一のために身体能力の優れた瞬志と貴志がそばに寄り添い。
龍頭の物見の台から、宇宙の星々をを眺める。




