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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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突撃流星

 船首には龍の頭部がこしらえられて、そこに梯子も柵もつけられて、物見台の役割も果たす。

 何よりも、甲羅のてっぺんにたなびく旗。

 白地に、赤き翼を持った虎が後ろ足で立つ勇ましい姿が描かれている。朝星半島に伝わる翼虎伝説にあやかったもので。瞬志自身、翼虎となった光善女王を国母と慕うほどだった。

 ともあれ、そんな亀甲船の船内に、ひとり。

 水軍の将軍であるといえども、さすがの瞬志も不安を禁じ得なかった。

 甲羅から出て、龍の頭を形どった物見台に出てみれば。

「!!」

 なんということであろう。

 眼前には宇宙空間が無限に思えるほど広がっている。いや、眼前どころの話ではない。上下左右、四方八方と、宇宙空間が無限に広がって。その暗き中で、無数の星々がきらめいている。

 星が集まり銀河、あるいは星雲をなしている。

 ただただ魂消て、度肝を抜かれて、呆然とするしかなかった。

 と思えば、

「兄さん!」

 などと、声がするではないか。しかも弟の。

 物の怪によって異界に連れていかれたのかと思ったところ、さらに驚きは重ねられる。

 声の通り、弟の貴志がいる。それだけではない、可憐ながら不思議な少女もいるどころか、その他さまざまに人がいる。その中に雄王や父ともうひとり弟もいるではないか。

 常人ならば腰を抜かして、そのまま気絶しそうなところ。厳しい訓練をくぐり抜けてきたおかげで体勢を崩さずにはいられた。

「王様!」

 瞬志は驚きつつも、思わず手を差し伸べた。この宇宙空間の中、皆浮いているが。父よりもまず雄王を船に導こうとした。

「かまわん」

 浮いてはいるが、移動は自由にできるようだと気付き。雄王は亀甲船に向かい、他の面々もそれに続き。

 瞬志は雄王を迎え入れて、その鋼鉄の甲羅の中に導き入れ。次いで父を入れ。

「お前たちはあとだ」 

 と、志明と貴志を後回しにして、女子どもらを入れた。が、なんと辰の公主の劉開華とその近侍である公孫真までいるではないか。

 なんという面々であろう。それこそ天下を揺るがす大事が起こっているのではないかと驚きを禁じ得ないが。それを堪えながら、つとめて冷静に振る舞った。

 亀甲船は宇宙を泳ぐ。その中に、暁星の王、雄王に、宰相の李太定に、その子である李瞬志と志明と貴志、貴志の連れ合いである香澄と龍玉と虎碧とリオンとマリーとコヒョと、……南達聖智!

 さらに辰の公主の劉開華と、公孫真。

 改めて見れば、本当になんという面々であろうか。

「そなたもか」

 雄王は瞬志を見据えて言う。

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