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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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突撃流星

 それがこうしてまた会うことになるとは。

(世界樹は何をさせたいんだろう)

 まさか怨みの心のままに争わせるためではあるまい。聖智は改心したと、雄王は言った。

 改心!

 なんと心を掻き乱される言葉であろうか。子どもの頃から親しんだ者らを無残に殺した者が、のうのうと生きている。改心したとて、そう易々と許せるものではない。

 しかし憎しみのまま聖智を害したとて、それは結局は己もまた同じ穴の狢になるということではないのか。

 脳裏に、もし憎しみのまま聖智を害すれば、ということが浮かぶ。その時の自分の顔。

 貴志は思わず顔を横に振った。

 醜い、なんと醜い顔をしているのか。復讐というものが傾城の美女や佞臣のように己に擦り寄ってくる。復讐という毒を含んだ美酒を突きつけられる。

 果たして復讐は聖智ひとりで済ませられるのだろうか。

(いや、おそらく済まないだろう)

 聖智のみならず、天頭山教の信徒や、それをかばう者らも復讐の対象にして。害するだろう。そして害された者は怨みの心を抱き、憎しみが憎しみを生む、憎しみの連鎖が生まれる。

 連鎖が続けば、国そのものを危うくするような大きな争いが生まれ。そこで数多の命が奪われる事態になる。

 憎しみの連鎖は、早々に断ち切らねば……。

(学は、そこに思い至るため)

 貴志は驕るのではなく、素直に学問をおさめ教養を身につけられたことを、これほどありがたいと思ったことはなかった。

「その様子では、椅子を勧めても応じるまいな。……そうだな、その子らのように、香澄のそばに控えておれ」

「……はい」

 聖智は言われるがままにリオンとコヒョとともに、香澄のそばに佇んだ。

 ともあれ、一同それぞれの位置は決まった。

 雄王、李太定、志明の目は、香澄の前に置かれた青銅鏡に向けられ。

「これは何か」

 と問う。

 ふと、それぞれ得物は所持したままであることに気付いた。雄王は知らぬふりで悠然としている。

(さすが大王の器……)

 太定は心配しつつも感服している。

 ともあれ、青銅鏡である。

「これは……」

 リオンとコヒョが口を開こうとしたとき、

「おんや?」

 ふたりして、間抜けな声を上げてしまった。

 見よ、床の上、椅子に腰かけていると思っていたが、なんと床はなく。椅子もいつの間にか消え、円卓も消え、壁も天井も、燭台も灯火もなくなって。

 眼下に、いや上下左右の四方八方、星空が広がっている。

 ということは、またも宇宙空間の真っただ中に放り込まれたのである。しかも、国王の雄王や、太定に志明、劉開華と公孫真も一緒に、である。

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