表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
429/539

突撃流星

 彼もまた、好漢らしい元気さに欠けてしまって、公主の護衛も満足にできなさそうだ。

 このしんのふたりの様子を見て、

(よくここまで逃げてこられたものだなあ)

 と、貴志フィチは胸中ため息をつく思いだった。道中はともかく、暁星ヒョスンに着いて緊張感が抜けて、腑抜けになってしまったか。

 香澄こうちょうは愛想よくほほえみ、静かに、しかし素早い動作で劉開華りゅうかいかのそばに寄り添った。その手には、青銅鏡。縁は青くなっているのに、鏡面だけは黄金に引けを取らぬほどに光り輝いている。雄王ウンワンらはそれが気にならぬはずはなかった。

 流星は彼女の手に持つ青銅鏡から迸り出ていたように見えた。これは何なのかと、問わねば。

「ごめんなさい、ありがとう」

 劉開華は静かに礼を言い。円卓の北側の椅子に腰かけ。その右側に香澄、左側に貴志が腰を掛けた。南側は雄王、その右側に李太定イ・テチョン、左側に志明チミョン

「子どもたちは、休ませよう」

 雄王はコヒョとリオンを見て優し気に言うが、ふたりは「いいよいいよ」と言ってちゃっかり香澄のそばに佇んだ。

「王様、この子らがいることをお許しください」

「……うむ」

 香澄は丁重に言い。雄王もその様子を見て、「まあよいか」と許した。マリーは貴志の隣に座る。龍玉りゅうぎょくは香澄の隣、またその隣に虎碧こへきが座る。

 しかし、南達聖智ナダル・ソンチ。彼女は気まずそうに、身を硬くして佇んでいる。雄王はそれを目にし、

「そなたは天頭山教チェトゥサンきょう天君チェグンか」

 と問う。貴志と劉開華に公孫真こうそんしんはぎくりとする。光燕世子クァンヨンセジャと組んで乱を起こしたのである。死罪である。それを寛大な処置で、実質不問にされているのである。

 聖智は跪き。

「はい」

 と、消え入るようなか細い声で応えた。

「そなたのことは、元煥ウォンファンから聞いたが。よく改心したな」

 雄王の顔は厳しくも慈悲に溢れていた。

 聖智は跪いたままで、身も心も硬直する思いだった。

 志明は聖智と初めて対面したが、李家の者たちを多数殺した者である、憎しみがないと言えばうそになる。しかし王の御前であるということで、どうにか平静を保っていた。

 太定も複雑な気持ちである。

「……幸いにして善き世に生まれ、この手で人を殺めることはなかったが。ご先祖様は剣を振るい戦場を駆け巡った、ということは、人を殺めておる。いかなる大義があろうと、殺めは殺めである。世が世なら、わしも……」

 聖智を見据えながら、重い口調で言う。

 貴志は思い余って光燕世子に、

「貴方は暴君だ!」 

 と叫んだことを思い出した。聖智に対してもやはり気持ちは複雑だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ