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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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突撃流星

 貴志も続こうとしたが、

「お前はここにいろ!」

 という雄王の一喝に身を縛られて、はい、と跪いた。続いて香澄が跪けば、マリー、リオンにコヒョ、聖智と龍玉、虎碧も、咄嗟に跪いた。

「これは何事か」

「わ、私にもわかりません。部屋で寝ているはずがなぜか宇宙の真っただ中にいて、あの鋼鉄の火龍がいて……」

「お前まで、何を言っているのか」

 耳を疑う話である。雄王らの目は鋭く、口調は厳しい。特に太定と志明は。

 貴志は身の縮む思いであったが。敢えて言う。

「畏れながら申し上げます。危機は去ったと見てよいでしょう。人々に安堵せよとお触れをお下しくださいますよう、進言するものであります」

「お前は自分の立場がわかっているのか、王様に進言など!」

 志明が焦りを伴った怒鳴り声をあげた。何かあれば李家そのものが危なくなるのである。

 という時。

 わあ、とくうを震わす喚声が轟いた。突然の空での出来事に多くの人民が驚き、恐慌し、我を失い、あらぬ行動に出る者も多かった。

「……うむ」

 王宮の中庭にまで聞こえてくるなど、ただ事ではない。かつてもの騒乱があったというのに。それを思い出した者も多かろう。

 貴志の進言通り人民に落ち着くよう促すために、兵を出す。ただし槍など持たず、剣は鞘に納め、つとめて無手の状態で人々に言い聞かせよと、雄王は衛兵に命じた。

 命令を受けた衛兵は駆け去り。王の言葉を伝えて回り。兵らは剣を鞘に納めたまま、なるべく無手の状態で人々に落ち着くよう促し回った。

 その間に、一同は雄王に促されて、部屋に入ってゆく。

 王が私的に客と会うための部屋であった。先に官女が燭台に火を灯し、ささやかながら夜闇を払いのける。

「ゆっくり寝たいところだが、それどころではないようだな」

 と言いつつ、安陽女王には、

「お前は休め」

 と言う。一瞬戸惑った女王だが、無理は身体に障りかえって迷惑をかけると思い、自室に引き下がった。

 部屋の中は、燭台の灯火がほのかに夜闇を払いのけ、それぞれの姿を夜闇から掬い出す。その中にあって雄王の目は闇の中でも鋭い光を放っているように見えた。

 劉開華といえば、王とは対照的というわけではないが、どこか元気がない。夜中に起きざるを得ないとはいえ、あの闊達さはどこに行ってしまったのか。

「貴志、公主のおそばに座ってさしあげよ。そうそう、その少女、香澄も。公孫真殿、よろしいかな?」

 太定は劉開華の元気のなさを慮り、親しい間柄である貴志と香澄が両側に座るよう促す。公孫真は、「もちろんかまいません」と大真面目にお辞儀をして言う。

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