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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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突撃流星

 貴志とマリー、聖智にコヒョとリオンは青銅鏡を持つ香澄のそばにいて。その、滅びの様を見届ける。この様子では火龍の逆転はないだろう。

 龍玉と虎碧も得物を手にしつつ動きを止め、その滅びの様を見届けようとする。

 源龍といえば無邪気に飛び回って、外れた流星を打龍鞭で打ち、鋼鉄の火龍にぶつける。

 耳をつんざく咆哮が轟き。漢星の人々は思わず耳をふさぎ、身を丸める者まであった。

 志明も思わず耳をふさぎ身をかがめた。しかし雄王に安陽女王に父の太定、さらには劉開華と公孫真は、身じろぎもせず、夜空を見上げていて。

 己を恥じて、姿勢を整えなおす。

「断末魔の叫びだ」

 貴志はぽそっとつぶやき。聖智は頷き。香澄も青銅鏡を手に静かに頷く。

「それにしても……」

 眼下の景色を見下ろして貴志は、不思議な思いに駆られる。

幻界入侵ファンチェンルゥチン

 香澄が続けるようにつぶやく。

 現実世界に幻界が入り込んだのだ。今の夜空の様はまさにそれである。そこからさらに、

「갑자기 유성(カッチャギユスン = 突撃流星)」

 聖智もぽそりとつぶやいた。

 流星群に攻められる鋼鉄の火龍に対して、神の怒りのようなものを感じる。

「もしかしたら、私が受ける責め苦だった」

 とも言った。誰も何も言えなかった。

 その鋼鉄の火龍といえば、身悶えしてのたうちまわり、やがてその鋼鉄の身体が光を発し。

 轟音を立てて、爆発を起こした。

 火龍の鋼鉄の身体は木っ端微塵に砕け散り、なんと、その破片は流星群もろとも香澄が手にする青銅鏡の鏡面に吸い込まれてゆくではないか。

 だから、破片が誰かに当たるという危険はなかった。

 同時に、

「うおおー!」

「ひええー!」

 という変な大声が聞こえる。何事かと思えば、

「あ、てめえ、この狗野郎!」

蚯蚓野郎みみずやろう!」

 源龍と羅彩女は咄嗟に得物を振りかざして、それらに襲い掛かった。それらは、あの、人狼と画皮の中身であった。

 なんとあの爆発の中から弾き出されるように人狼と画皮が飛び出し。溺れる者のように手足をばたつかせ、眼を剥き大口を開けて悲鳴を上げていた。

 その間にも、すう、と降下し。すとん、と王宮の中庭に降り立った。

 中庭には国王の雄王や父の太定らがいて、降り立った者たちを驚きと戸惑いの目で見据え、黙り込んでしまっていた。

「くそ、やってられるか!」

 一瞬皆が石のように固まった間に、人狼と画皮は高い身体能力を見せ、塀を飛び越え屋根に上り、素早く駆けてどこかへと逃げ去ってしまった。

「待ちやがれッ!」

 源龍と羅彩女も追って、一緒に走り去ってしまった。

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