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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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突撃流星

「貴志が……!」

 まさかと思いつつ、太定もさずがに唖然とする。なぜ息子が。

「ただ、見覚えのない女や子どももおります。どこで出会ったのでしょうか?」

 女は聖智で、子どもはコヒョのことだ。

「あ、あの人は!」

 劉開華が聖智に気付き、どのような者であるかを簡潔に話せば、

「うむ、その話は元煥ウォンファンから聞いておる」

 応えるのは雄王であった。天頭山チェトゥサンを信仰する天頭山教の教主が、あろうことか世子セジャとともに反乱など、とうてい許せぬことである。しかも古代の国・耶羅ヤラの王族の末裔というややこしさ。

 ともあれ、本来なら兵を差し向け弾圧し、聖智を捕らえ、天頭山教も解体させるところだが。元煥の口添えもあり、敢えて泳がせていたが。

 果たして。天頭山教は地域に貢献する善良な団体となったという。信徒はよく働き、税も収める。ただ人の世にはいさかいもあるもので、役所と人民の間に何かがあることもある。その場合、天頭山教は徹して人民の側に着いたという。

 ただ、地域からの天頭山教への信頼は厚く。また信徒らはよき納税者でもあって、いかなる横柄な役人も頭が上がらず。最後には役所が引く、という。

 悪い話もあるが。それは心根の良くない信徒が吹聴するもので、聞く価値がないものばかりであった。

 信徒が悪さをすれば、まず教団の方から厳しく対処しているという。悪い話はその逆恨みから来たものだった。

 ともあれ、今の聖智には、かつてのような邪悪さはなくなったと見てよいだろう。その聖智が、今、漢星の夜空にて貴志や鋼鉄の火龍らとともにいるとは、これはどうしたことなのか。

 雄王も安陽女王も年のせいで目が利かず、はっきりと見えず。若い者の視力に頼るしかなかったが。

 すわ、漢星の夜空に鋼鉄の火龍現る! と身構えるも。その火龍は数多の流星に当てられて、もだえ、のたうちまわるという無残さで。拍子抜けする思いもある。

 この様子はもちろん、漢星の人民らも目にしている。

「流星が……!」

 人々は異変に驚き夜空を指差しながら見上げ、子どもは泣き叫び、大人も魂消て腰を抜かす者まで続出する有様。

 だが、様子がおかしい。数多の流星が火龍に当てられている。

「様子がおかしいぞ」

 徐々に、人々は火龍の劣勢に気付き、

「いいぞ、やっちまえ!」

「いけいけー!」

 などなど、流星に声援を送る者が現れ出した。

 そんな眼下の様子が感じられるほどに降下し。羅彩女は呆気に取られていた。香澄に渡した青銅鏡から流星が迸り出る。あんなことまで出来るものだったのか、あれはと、ただただ呆気に取られた。

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