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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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突撃流星

 言われる通りに貴志は聖智に筆の天下を貸した。最初は誰だろうと思ったのが、あの、天君であると知り、驚きも大きかったが。香澄に言われるがままに筆の天下を貸した。

 受けた聖智もまた、やや迷いつつも、星に、

「安」

 の一字をしたためた。

「天下を望むなど、わずかな者たちのために……」

 聖智はぽそっとつぶやきながら、筆の天下を返した。つぶやきに対して、香澄や貴志らも何も言わない。

 言えなかった。

 鋼鉄の火龍は源龍らから離れた。逃げた、のではない。源龍らを避け、照準を香澄らに合わせるではないか。

 聖智は「安」のしたためられた星を手放せば。投げつけたわけでもないのに、途端に勢いよく、流星となって尾を引き、鋼鉄の火龍のもとまで飛んでゆく。

 火焔が放たれた。しかし、流星の風を切る勢いによってかのように吹き飛ばされて。そのまま、大口の中に飛び込んだ。

 口内で弾け、光が閃き。火焔に代わって光りを口から吐く格好で鋼鉄の火龍はのたうちまわり、金属音の悲鳴をあげた。

 すると、鏡面から、無数の星々がほとばしり出る。

 鏡面から出た無数の星々は小さな銀河を形成し、四方八方にちらばり。それぞれの面々のもとまで飛んだ。

「……そうだ! こうしてやる!」

 源龍は打龍鞭を横薙ぎに振るって星を打った。打たれた星は流星となって鋼鉄の火龍まで勢いよく飛んで、ぶつかり、光が弾け。そのたびにのたうちまわる。

 貴志はマリーと香澄と聖智に、リオンとコヒョとともに、その様を静かに見守る。かたきではあるけれど、星に打たれてのたうつ鋼鉄の火龍に哀れみを覚えた。

 龍玉と虎碧も、動きを止め様子を見守る。

「なんて成り行きだい」

 と、龍玉はやや呆れつつも、

「でも、星に助けられたんだね……」

 と、ぽそっとつぶやく。

 源龍のそばまで、いつの間にか来ていた羅彩女も、軟鞭を横薙ぎに振るって星を打ち放ち、鋼鉄の火龍にぶつける。

 龍玉もそばにある星を掴んで、意を決して投げつける。虎碧は何もせずに、じっとその様を見守るばかり。彼女も、火龍に哀れみを覚えていた。

(力に驕れる者の末路か……)

 貴志は哀れみを覚えつつも、劉開華の話を思い出す。この火龍による犠牲者も、相当数いよう。それを思えば、哀れみを覚えるのも違うだろうが。哀れみを覚えるのも、これを他人事と思わず、もしかしたら、あの、光燕世子のように、自分もなっていたかもしれないと思えばこそでもあった。

 コヒョなどは元刑天として、まさに自分事である、痛感するもの多く。目を潤ませ身震いする有様。

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