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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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突撃流星

 羅彩女は青銅鏡を手にし、あの、雲の巨大皇帝が唸りをあげながら欲していたのを思い出した。古くて青みがかっているが、鏡面はよく磨かれてくっきりして、羅彩女の顔を映し出す。

 不思議な鏡だ、この鏡があの火龍にどれほどの効果があるのか。

 火龍の鉄球は貴志とマリーを追っていたが、突然減速したかと思えば、身を解き追ってくる源龍らに向かって大口を開けた。

 ご丁寧に口の中までもが、牙も二つに分かれた舌も、鋼鉄だった。一体誰がどのようにして造ったのか、そこまで考える余裕などあるわけもなく。

「なんだこの野郎!」

 先頭に立っていた源龍は打龍鞭をその鼻先目掛けて振り下ろした。

 がん、という鋭くも思い金属音がしたが。びくともしない。

「くそッ!」

 源龍は忌々しく咄嗟に離れて。龍玉と虎碧はそれぞれの得物から火焔を放ち。香澄は素早く後ろに回り。七星剣を横薙ぎに振るって、その尾の先端を斬ろうとするが。

 これも鋭い金属音を立てるだけで、びくともしない。

 咄嗟に離れ様に、ぶうんと尾が唸りを上げて香澄にぶつけられようとするが。すんでで逃れて、間合いを開けて七星剣を構えなおす。その間に青龍剣と赤虎剣からの火焔が放たれるも、火龍の火焔とぶつかり合って火の玉となって、弾けて消えた。

「打つ手なしじゃねーか!」

 源龍が切れて吼える。

 誰の得物も、香澄の七星剣ですら効かない。一体どうやってこれを倒せと言うのか。

 聖智は軟鞭を握り子どもらを守りつつ、呆然と傍観するしかなかった。その子どもら、リオンとコヒョは顔を見合わせて、

「やばいねこりゃあ……」

 と、苦笑し合う。

 追撃が止んで、一旦停止した貴志とマリーも呆然とその様を眺めるしかなかった。一体どうしろというのか。

 貴志は一旦しまった筆の天下を取り出した。

(あの、鳳凰の天下と初めて遭遇した時のように、何かあるはずだ)

 しかしあの時のように、声はない。何かしらの導きがあれば違うのだが。

「諦めないで、攻め続けるのよ!」

 言うや、香澄は火龍の後方の位置を保ち、七星剣で尾を斬ろうと迫る。源龍も香澄と並び、打龍鞭を尾にぶつけようとする。

 龍玉と虎碧は鋼鉄の火龍と火焔を競い合った。

 青と赤の火焔同士ぶつかり、火の玉になって弾けて消えて。七星剣と打龍鞭は火龍の尾と渡り合い、金属音を響かせる。

「天頭山よ、守り給え!」

 聖智は祈りの言葉を唱える。

「天頭山の頭上にいます太陽、月や星の守護神も、我らを守り給え!」

 はっきりと声に出し、己心の魔を追い払う。それでも、己心の奥底から魔が顔を覗かせる。恐怖という、己心の魔が。

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