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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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幻界入侵

「人の心だよ、人の心が出したんだ」

 聖智のつぶやきにコヒョが絶叫して応える。暴風は徐々に弱まり、少し強い程度になり。コヒョはよいしょと立ち上がり。

 龍玉は青龍剣を、虎碧は赤虎剣を、聖智は軟鞭を構える。が、戦って勝てるかどうか、わからない。

「人の心だと」

 この子は何を言うんだと疑問だらけではあるが、人心があのような禍々しい鋼鉄の火龍を生み出すというのは、納得のできることではあった。

(かつては私も……)

 己心の魔にに負けた。そのためにどれだけの人が死んだだろうか。その罪は償い難い。

 鋼鉄の火龍は夜空を背に空を飛び、時に我が身を輪にし、三日月や北斗七星を囲むような仕草も見せる。

 と思いきや、こちらに顔を向け、大口を開ける。その中は、禍々しく光る。

「危ない!」

 コヒョが叫んで、咄嗟に合掌しむにゃむにゃ唱えれば、龍玉と虎碧にコヒョ、聖智の身が浮き。同時に火焔が鋼鉄の火龍から発せらせて。

 さっきまで四人がいたところにまで灼熱の炎が舌のように伸びて至る。

「おおお……」

 聖智は思わず声を上げた。

 四人空を飛び、火焔が天湖のふちを焦がす様を見下ろす。火焔により周囲は明るくなり、地面の岩盤は赤く溶け、水は沸騰し湯気を上げる。

 天湖は火口の湖である。再び噴火せんとしているかのようであった。

「こんなのとどうやって戦えってのよ!」

 龍玉はやけになって叫んだ。聖智も、唸って、黙する。しかし虎碧は違った。赤虎剣を握りしめて。

「コヒョちゃん、私を火龍まで飛ばして!」

 と言うではないか。

 そんな無理だよ! と言うのかと思ったが。

「うん!」

 コヒョは念じて、虎碧に言われたがままに火龍まで飛ばす。

 火龍は虎碧が迫るのを見て、再び火焔を放った。あれに当てられれば、真っ黒こげだ! と思われたが。

 にわかに赤虎剣は赤く光り、

「えいッ!」

 虎碧は渾身の力で剣を振り上げ、振り下ろせば、赤く光る剣身から火龍のような火焔が放たれて。

 火焔と火焔がぶつかり。弾け。激しく火花が散った。

 龍玉と聖智は口をつぐんでその様を見届ける。

 ぶつかり合った火焔は、激しく火花を散らし、大きな火の玉になり。今の夜の世界が、一気に明るくなって、朝が来たかのようにも錯覚させられた。

 その火の玉も、やがては消え、再び夜に戻った。

「すごい、じゃあたしの剣も!」

 龍玉は勇気を奮い起こし、青龍剣を握り、コヒョに飛ばしてもらえば。その剣身は青く光り出し、横薙ぎに振るえば、青い火焔が火龍向けて放たれる。

 火龍も負けじと火焔を放てば、赤と青の火焔はぶつかり合い。大きな火の玉となって周囲を照らし出し、激しく火花を散らす。

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