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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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幻界入侵

 それで、この源龍と羅彩女の様子が、例の厚紙越しに見えるわけである。

 香澄とリオンは、厚紙こと通心紙を眺めた。

「これは何?」

 マリーの声だ。寝ていたと思っていたが。

「なんだか胸騒ぎがして、通心紙を見てみれば……」

 世界樹と通じ合えない上に、厚紙の面いっぱいにひろがる宇宙の銀河。

 三人とも部屋の燭台に火はなく、暗い。そんな暗い中で、通心紙越し宇宙の銀河を見るうちに、自分たちもそこにいるような錯覚を覚えそうである。

「ねえ、この僕らの話はふたりに聞こえてるかな?」

「……。聞こえていないみたいね」

 源龍と羅彩女は浮きながら得物を構え、四方八方に注意を払っている。ただふたりの声はこちらに聞こえた。

「碧児は、碧児はどうしているかしら?」

 娘を心配するマリーの声。

 通心紙の様子がおかしく、世界樹と繋がらない上になぜか宇宙の銀河を見せられて。そこに源龍と羅彩女はいるのだが、龍玉と虎碧はどうしているのかわからず。

「それで、ここでなにをしろってんだよ」

 源龍のいら立つ声がする。香澄は紙面を指でなぞるが、中に入るようなことはなく。変わるものはなかった。

「見ることしかできないの?」

「う、うーん。どうなんだろう?」

「世界樹に何があったのかしら?」

 世界樹に異変があったのか。その真意を読み取るのは難しいどころか不可能に近く、香澄やリオン、マリーにも世界樹のことは測りかねる。

 すると、銀河星団の中でひときわ強く輝く星があった。その星は強い光を発しながら、動いている。

 流星か。と思われたそれは、源龍と羅彩女にぐんぐんと近づく。ふたりも気付き、得物を構えれば。

「青銅鏡!」

 なんと、源龍が叩き割ったはずの青銅鏡がこの宇宙の銀河の星々に紛れて光り輝いているではないか。

 特に鏡面の光を発する強さは、まともに見ていられないほどである。が、青銅鏡は鏡面をふたりに向け、これみよがしに光を向ける。

「なんだよこれは」

「眩しい」

 太陽も月も見当たらぬ星空の中で、何を反射させているのか。青銅鏡は強い光をひたすら発していた。

 眩しくて手で閉じた目を覆うも、それでも光は無理やりにでも瞼の間を抜けてきらきらとした光を見せつける。

 それがやまった。やっと目を開けられたふたりが青銅鏡を見れば、そっぽを向いて光を発していた。

 発せられた光はこの宇宙空間の中、まっすぐに彼方の紫色の、まるで雲のようにも見える星々の集まりに向けられていた。

 それはさながら紫の星の雲でもあり、この宇宙の中にあるもうひとつの小さな宇宙のようにも見えた。

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