表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
404/539

幻界入侵

 雲の皇帝は、思わず立ち止まって。割れた鏡を眺めて。突然頭を抱えて。

「おろろろろ~~~」

 と、意味不明なうめき声をあげだす。すると、その白い身体が膨らんだかと思えば、霧散しはじめたではないか。

 雲の皇帝は霧散し、霧となって周囲を包み出し。視界も悪くなってくる。

「こりゃなんだ」

「何が起ころうっての?」

 源龍と羅彩女は互いの声を頼りに寄り添い、得物を構えるが。もはや世界樹や子どもたちも見ることが叶わないほど、濃い霧に包まれた。

 それよりもなによりも、どうして源龍は青銅鏡を叩き割ったのか。

「あれは大事なものだったんじゃないの!?」

「知らねえがなんか割れって言ってきたんだよ」

「何言ってんのよ」

「例の世界樹さ、頭の中に話しかけてきやがった」

「もう、わけわかんないよ!」

 濃い霧に包まれて背中合わせに得物を構え、ふたりは口論したが。霧は益々濃くなり、陽の光すら遮って、暗くなってゆく。緊張感も高まって、口論も止まる。

 源龍は鳳凰に飲まれて、おかしな世界に放り込まれたことを思い出した。この霧は、元は雲の皇帝である。ということは、その中に飲まれたも同然ではないのか。

「まさか、また別のどこかに行かされるってのか」

「まさか」

「世界樹のことだ、やりかねねえぞ」

 どんどん暗くなってゆく。急に陽が落ちて、夜の帳が落ちたようだった。やがては周囲は白一色だったのが、黒一色になった。

 夜霧の中というのも、なかなかに不気味なものである。と思えば。

「星?」

 ふと空を見上げれば、空にはたくさんの星々が浮かんでいる。いつの間にか霧は晴れたようだが。しかし。

「月がない?」

 霧が晴れて、夜空の星々が見渡せるようになったが。月はない。月のない星空が頭上に広がっている。と思ったが。

「!!」

 足下を見ても、眼下に広がるのは星々きらめく夜空。いや、足下の夜空は夜空というのだろうか?

 草原にいたはずだ。それが、知らぬ間に夜空に代わるとは。想像を絶する出来事である。

「なんだここは!」

「夜空に浮いてんの、あたしら?」

「雲の皇帝に飲まれてこの様だぜ」

 源龍は忌々しく舌打ちをし、周囲を見渡す。

「あたしら、飛んでるの?」

「みてえだな」

 足の感触はない。しかし踏ん張れる不思議さ。

「きれい……」

 羅彩女は思わずつぶやく。

 たくさんの星々は河をなすかのように集まり、連なっている。

 夜空に対し特に意識しなくとも、銀河という言葉を聞いたことはあるが、まさに夜空に星々が銀の河をなしていた。

 茶と饅頭をいただきながら眺める分には大いに結構なのだが。今は予断を許さぬ時である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ