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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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幻界入侵

「公主のこともある、細かなことは明日にしよう」

 王はそう言い、李家の面々も同意し。用意された部屋に入った。今夜は邸宅に戻らず、王宮に泊まりである。

 李太定イ・テチョン志明チミョン貴志フィチはもちろん、香澄こうちょうにマリー、子どものリオンですら個室が与えられた。これはもう相当な厚遇である。ただ、一旦部屋に入ったら、出ずにそのまま寝ることを申しつけられたが。

 香澄は寝間着に着替えてさっさと寝台に横になり。マリーもやることなく寝間着に着替えてそのまま寝台に横たわり。リオンなどはがさつにも着替えることなくそのまま寝台に飛び乗り。

 どん、という音をさせて室外の衛兵に、

「どうした!?」

 と言われる始末。

「あ、な、なんでもありませーん!」

 調子に乗って寝台に飛び乗った旨伝えれば。

「おとなしくしていろ!」

 と、厳しくたしなめられて。「はーい」と、部屋の中で相手に見えないのをいいことに舌を出して笑って誤魔化した。

 太定も志明もおとなしく寝たが。貴志は寝つけず、燭台に火を灯してもらい。寝台に胡坐をかいて座り、瞑想にふけった。

 で、リオンは寝台に腰掛け、ふところから掌大の白い厚紙を取り出し。その表面をじっと見つめていたが。何の反応もない。

「ありゃりゃ、ほんとうに世界樹は厄介なことになってるんだ」

 優しく撫でて、世界樹とのやり取りを試みるが。あの草原世界は見えず。代わりに厚紙には夜空の銀河が映し出されていた。

「この果てのない世界に、色んなものがあるんだねえ」

 しみじみと厚紙に映し出される夜空の銀河を眺めて、リオンはつぶやいた。

 厚紙は不思議なもので、リオンの不安を察してなのか、その心をなだめようとするように銀河を見せた。夜空に輝く星々がきらめき、河のように連なる様はまさに銀河であり、美しい景色の広がりを見せる。

 眺めるうち自分の身も心も銀河に溶け込みそうだった。

 すると、うっすらと何かが映し出されて。ややあって、それが人の顔、香澄の顔になった。

「眠れないの?」

 と、銀河を背に問いかける。こちらが見えているようだ。

「うん。香澄も?」

「ええ」

 香澄は一旦横になったものの、寝付けず上半身を起こしてリオンと同じような厚紙を取り出し、もてあそんでいるうちにリオンのとつながったという。

「私のも宇宙の銀河が見えるけど、それだけ」

「そうなんだ。僕らに宇宙の銀河を見せて、どうしようってんだろ、これ?」

「さあ……」

 香澄は消え入りそうな声ではあるが、言葉を継いだ。

「でも、きれいね。天女になって泳いでみたいわ」

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