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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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遇到公主

 いつの間にか多くの鬼たちが宮殿内にあふれて、次々に人にとり憑く。

「おかしい。鬼があふれて、かたぎにも見えるなんて」

 羅彩女は鬼を見ることができ、そのそばにいる者もみることができるが。あくまでも羅彩女のそばにいればの話である。しかし、離れた者たちにも鬼が見えて、襲われている。

「僕たちは夢も現もなにもかもごちゃまぜな世界にいるんだよ」

 子どもは達観したようなことを言う。

 とは言え逃走中である、深く考えることはできない。

「出口はどこだ!」

「む、向こうでございます」

 宮殿に不案内な一行は途中で官人に尋ねてゆくが、これがなかなかに広く、駆けども駆けども出口に行き当たらない。

 そこに衛兵が立ちはだかる。が、鬼の群れが衛兵に襲い掛かって憑き殺してしまう。それは敵ながらむごいと思わされるものであった。そして、そのために衛兵も怖じて逃げ出す始末。

「桃の木剣だよ、こいつらは桃の木剣じゃなきゃ消えないよ!」

 やむなく羅彩女は助言するが、聞いてもらえたかどうか。宮殿なのだから桃の木剣くらいあるだろうが。

 ともあれ、おかげで駆け続けることはできるが、混乱は増してゆく一方。これでは宮殿から逃げられたところで、ほっと一息つけるのかどうか怪しいものだった。

(天下を象徴する人食い鳳凰は、はじまりにすぎなかったのか!)

 貴志はこれからのことを考えると、どうにも胸騒ぎがおさまらなかった。

 そんな逃げる一行を見つめる四つのまなざしがあった。

 十字に交差する廊下で一行に見つからぬよう姿を隠し。互いに頷き合う。

「こっちよ!」

 という声がする。若い娘の声だった。それに続いて、

「こちらに来なされ!」

 と初老の男性の声もする。

 女官と官人らしきふたりの男女が手招きするのが見えた。廊下が十字に交差するところだ。一行から見て右側の廊下から顔を覗かせて、手招きをしている。

 そこに鬼どもが襲い掛かるが。

「こんなこともあろうかと!」

 女官は木剣を振るい、鬼どもを消滅させる。

(この身のこなし、手練れだな)

 源龍は警戒し、淡々と駆けていた香澄の目も少し鋭くなったが。今は迷うことはできない。人数はこちらが多い。いざとなればふたりを懲らしめてまた逃げなおすのみで。

 ままよ、と手招きされるまま、ふたりの方へと向かった。

 男女は一行が目の前まで来ると、真剣な顔つきを見せて。

「ついてきて!」

 女の方が指図し、先頭に立って駆ける。 

 駆ける途中、宮殿の官人とすれ違って。それらは異様に驚いた顔を見せたが、無視。

 幸い人もまばらだったおかげで妨害されることはなかった。皮肉にも鬼どもが混乱を広め、衛兵はそれにかかりっきりにさせられ、追われて襲われることもなかった。

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