表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
395/539

幻界入侵

 とつとつと語る劉開華の顔には、彼女のよい特徴である闊達さはなかった。ただただ重かった。

 いきさつを語るうち、声も小さくなり消え入りそうだった。

 貴志にはそれがなによりも辛かった。彼女は公主で、次期女帝候補者とはいえ、その内面は、暁流ヒョりゅうと呼ばれる暁星の歌舞団などの文化・芸能に憧れるひとりの少女だからだ。

 時折、安堵を求めてか、貴志と香澄、リオンの顔を密かに見つめたりする。そのたびに、微笑みを返すのだが。微笑みをもってしても、彼女の顔は軽くなることはなかった。

 しかし、恐ろしいことはともかく、不思議なこととは。

「鄭拓が私兵を率いて皇宮を包囲するとともに、空から鋼鉄の龍が突如現れ、火まで吐いたのです」

「鋼鉄の火龍……」

 公主は何を言っているのかと、雄王に安陽女王、太定に志明は眉をひそめる。謀反で国を追われた衝撃から、心まで病んでしまったかと思わざるを得なかった。

 しかし、貴志と香澄、リオンとマリーは疑わなかった。

「ともあれ、よくぞご無事であらせられた。部屋を用意いたすゆえ、ごゆるりと休まれよ」

 雄王は劉開華と公孫真の様子を見て、これ以上話を聞き出すことはやめ。休んでもらうことにした。

「たれかあるッ!」

 そう声を張り上げれば、衛兵と官女が来て、雄王の指示を受け。劉開華と公孫真を案内する。

「お世話になります」

 劉開華はお辞儀をし、公孫真も深く頭を垂れ。部屋に案内される。諸葛湘も付き添って着いてゆく。

 それからまた衛兵を呼び、辰に異変あり、国の警護を厳重にすることを各部署に伝えるよう指示を出す。衛兵は驚きつつも、

「かしこまりました」

 と、部屋を飛び出す。

「これから忙しくなるぞ」

 雄王は顔を引き締め言い。安陽女王と太定は頷く。

 という時、ぐー、と腹の音が鳴る。リオンだった。恥ずかしそうに照れ笑いで誤魔化す。

「そうじゃったのう、今まで何も食わずにおれば腹も減るであろう。食事にいたすか」

 太定は優しげに微笑んで、王と女王に、食事にいたしましょうと進言すれば。

「うむ、食事にしよう」

 と、官女に命じて支度をさせる。この部屋で、この面々と、である。

「そこまで王様とご一緒させてもらうなど、あまりにもこの身にふさわしくありません。どうか、辞退させてください」

 貴志は深くお辞儀をして辞退を申し出る。貴志はまだ官職にないとはいえ、宰相の子にして、王族でもある。雄王と安陽女王と食事を共にしても、なんら問題はないのだが。

「私も、同じく。どこの馬の骨ともわからぬ者がここまで同席させていただくなど……」

「私も、身に余ることです」

「僕も……」

 香澄とマリーとリオンも辞退を申し出る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ