表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
388/539

幻在相交

 それから、方向を変え、細長い胴を丸めて大きな円を描いて。虚空に留まり。

 その火焔のごとき真っ赤な目を、世界樹に向ける。

「来るか!」

 龍玉と虎碧は内から湧き上がる恐怖を抑えて、剣を構える。しかし、火焔を吐かれればひとたまりもなく燃やされてしまう。

 しかし、鋼の火龍は、しばし世界樹をじっと眺めた後。また身を直にして、池に向かって勢いよく降下し頭から突っ込み。

 激しく水しぶきをあげながら、池の中に沈んでゆくではないか。

「池はここと人界をつないでもいるんだ。鋼の火龍は人界に行くつもりだ!」

 コヒョは叫び、龍玉と虎碧は我知らずに駆け出し。池のほとりで止まり、水面を眺めた。

 鋼の火龍は池の中に沈み切ったのか、水も落ち着きゆらゆら揺れるのみ。

「……」

 どうする。追うか。しかし、追ったところで……。

「行かないで」

 子どもたちだ。すっかり恐怖にとらわれてしまって、龍玉と虎碧に縋りつく。

「龍は人の世界に行ったと思うかい?」

「うん、さっき水面に映ったところに行くんじゃないかと」

 龍玉の問いにコヒョはそう応える。貴志の実家らしき屋敷が映っていたから……。

暁星ヒョスンって言ったっけ?」

「うん、貴志さんは私たちの時代より未来の人なのよね」

 ふたりは白羅ペクラ朝星チョスン半島を治めていた時代の生まれである。貴志や羅彩女、源龍と違う時代の生まれである。だからもちろん暁星を知らなかった。

 とりあえずの話を聞かされている程度であるが。にわかには信じがたい話である。しかしさっきまでその時代、暁星にいたのである。流浪の身、そして妖の身ながら大陸の生まれである龍玉と、いつしか母とはぐれて流浪の身となった虎碧は大陸の側にいたので、半島のことは詳しくないながら。

 かつて天頭山チェトゥサンに赴くために白羅入りした時のとは受ける印象が違うことは意識できた。東西にのびる半島の東部と西部と、地理的なものもあるし、なおさら違う印象を受けた。

「……。人の世界は、貴志お坊ちゃんに任せてみよう!」

 龍玉はそんなことを言う。虎碧は目を丸くする。

 水虎も今は立ち上がって、子どもたちと一緒に龍玉と虎碧を囲んで、

「ここにいてくれるの!?」

 と、他の子どもたちと一緒に安堵している。

「でも、ここにいて、どうするの?」

「どーせまたなんか出るんでしょ。ならそれを相手にするまでよ!」

 すると、また、池の中心が泡立つ反応を示した。何事かと皆、身構えてみれば。

 水面からなにやら先端が突き出たと思えば、それは一気に垂直に立って姿を現し。次いで、倒れるように、ざぶん、と水音を立てて横たわった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ