表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
38/539

捏的測験

 同じくして悪鬼どもも突然落下して、消えてなくなり。悪鬼にとり憑かれた者は正気を取り戻した。

 源龍や羅彩女に貴志は呆気にとられながらそれを見て、香澄は淡々とし、子どもはほっと一息ついてしゃがみ込む。

「なるほど天下が人を食い物にするとはな。なかなか文学的な話じゃねえか」

 源龍はよくやったと貴志の肩を軽くたたいてねぎらい、羅彩女も嬉しさを弾けさせて貴志の手を握り「ありがとう」と言い。

 淡々としていた香澄も、ここでは微笑みを見せた。

 貴志も安堵して笑顔になるが。

(天下が人を食らうか、恐ろしい話だ) 

 ふとふと、そんなことを考えた。

 子どもはというと、ふところから何か掌大の四角いものを取り出す。白い厚紙のようだが、その厚紙から声がする。

「次の段階に進めてもよいでしょう」

 穏やかそうな女性の声だった。子どもの持つ厚紙には、なにか絵が映し出されている。それは絵と言うにはあまりにもくっきりとしたものだった。

 その絵は、あの世界樹だった。子供は厚紙を通じて世界樹と話をしているのだった。

「僕もそう思います。では、しばらくこのまま進めます」

「あなたも怖い思いをしますよ」

「はい。でも、僕もこの人たちと冒険を楽しみたいです」

「そうですか。くれぐれも気を付けて」

 そこで絵が映るのが終わり、ただの白い厚紙になり。ふところに戻した。

 人食い鳳凰は退治されて。それを遠巻きに見ていた臣下たちはただただ驚いて、助かった喜びから源龍らの面々のもとまで駆け寄って、

「よくやった、よくやった」

 と言うのかと思いきや。

「見れば下賎の者どもではないか。ここはお前らのいていい所ではない、やることをやったら、出て行かぬか」

 傲然と言い放ち。源龍は目をいからして臣下らを見据え、今にも打龍鞭を振るって打ち据えそうな雰囲気であった。


 細身の身体に豪奢な官服をまとうその臣下は、源龍や貴志たちをあからさまに見下していた。

 貴志は源龍の雰囲気を察して、すぐに打龍鞭を握る右手首を握った。

「こいつら、自分らが助けられたのも忘れて」

 羅彩女も怒りで目を血走らせる。

 香澄と子どもは淡々としている。

「これが、腐敗」

 宮廷の腐敗を聞いたことはあるが、まさかここまでとはと、強い失望を禁じえなかった。

 鳳凰は消えてなくなった。

(このような下賎の者どもに借りなど屈辱。それにあの化け物が消えてなくなるとは。証拠はないということ)

 臣下、鄭拓ていたくはにやりをほくそ笑んだ。

「であえであえー、謀反人じゃ、謀反人をとらえよ!」

「なんだと!」

 舌打ちをしつつも、宮殿を出ようとした面々に向かい、鄭拓は謀反人じゃと叫んだ。


捏的測験 終わり

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ