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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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捏的測験

 鳳凰は天井付近を悠々と泳ぐように浮遊し、眼下の惨状をご満悦そうに眺めている。

「まったく、うぜえ!」

 悪鬼にとり憑かれた者らが襲い掛かり、源龍はそれを払うために打龍鞭を振るった。

「殺しちゃだめだよ!」

 と子どもが言うので、怪我はしても死なない程度に力加減をせざるを得なかったが、これが結構面倒くさいものだった。

 香澄や羅彩女に対し、股間を膨らませるものもあり。

「ふざけんじゃないよ!」

 と羅彩女は木剣で襲い掛かる男どもを打ち払い。香澄も七星剣を鞘に納めて、手加減した掌打で気絶させて身を守った。

 貴志は筆を持ち、鳳凰の別名は何かと考えあぐねながらとり憑かれた者や悪鬼をかわし。子どもは貴志にすがっていた。

 悪鬼も襲い掛かって、それも払わねばならず。休む暇などなく。このままではいずれ体力の限界を迎えて、やられてしまう。

 皇帝と皇后はすでに逃げ出してもういない。逃げ遅れて、悪鬼にとり憑かれた者たちは、何のかんの言っても数に限りがあったのでやがて皆気絶させられたが。

 悪鬼らは鳳凰の嘴から溢れ、とどまることを知らなかった。

「まだ思いつかないのか!」

「はやくして、あたしらもやられちゃうよ!」

「まったくとんだ測験(試験)だよ」

 源龍と羅彩女は貴志に催促する。しかし香澄は淡々としている。

「そういえば……」

 悪鬼に映し出される悪行。その中でくっきりと見やすい悪行は戦争や権力争いが主で、乞食が物を盗むといったものは霞のように薄っぺらい。鳳凰は特に、戦争や権力争いに明け暮れる者を好んでいるようだ。

 戦争や権力争いに明け暮れる者は、何を求めてそうするのか。

「皇帝と皇后を食らってこそ、我が本懐が遂げられる」

 鳳凰は眼下の景色に見飽きたと、皇帝と皇后を求めて謁見の間を出ようとする。

 しかし悪鬼は残って、源龍ら面々に襲い掛かる。

「ああ、そうか!」

 貴志は閃き、筆を構えて、大きな動作で、

『天下』

 と宙に墨痕鮮やかに書いた。

 すると、宙に浮く天下の字は膨張をはじめ、鳳凰に向かって勢いよく飛ぶではないか。

「な、な、なんじゃこれは!」

 天下の字に追いつかれて、しかもそれが嘴から無理矢理に入り込んで。一気に鳳凰の腹が膨れて。それに伴い重さも増してか、翼をはためかせて落下し。罠にかかった鴉のような、耳をつんざく悲鳴を上げてのたうちまわり。

 それにつられるように、悪鬼はぶるぶる震えだし。

 鳳凰の腹はとどまることなく膨らんで。ついには――。

 ばあーん!

 と、大きな音を立てて破裂し。その破片が宙に舞って、床に落ちると雪のように消えてなくなった。

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