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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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打敗女王

 魯真は没有幇の心ある貧者とは思えぬような邪悪な笑みを浮かべた。

 その間、光り輝く球体は、周囲を照らしながら成り行きを見守っているようだったが。今度は、なんと、大きくなってゆくではないか。

 何かを吸い込んだかのように球体はみるみるうちに大きくなってゆき、刃を交える香澄と穆蘭も戦いを邪魔され離れざるを得なかった。

「これは」

 何を思ったのか貴志は球体に近づき、手を伸ばして触れる。すると、手はそのまま球体に入って。しかし貴志は平然として、そのまま自ら球体の中へと吸い込まれるように歩んで、ついには全身球体の中。

 香澄とマリーとリオンも視線を交わらせて頷き合い、球体の中へと駆けこめば。三人ともそのまま球体の中へと入り込んでしまった。まるで光に吸い込まれるかのように。

「逃がすか!」

 刹嬉と穆蘭、魯真も咄嗟に駆け出し自ら球体に吸い込まれてゆく。他の兵らは、怖じて身動きが出来ないようだった。

「何が起こっているんだ」

「我々はどうなるのか」

「神罰が下るのか」

 などなど、堪えられぬ恐怖を口にする。そこに、

「敵を見誤るな!」

 という叫びが聞こえるや、その叫びの主はみすぼらしい貧者で、ふたり。それが球体に向かって駆けて、飛び込むように自ら吸い込まれたのである。

「没有幇の馬豪、ここにあり!」

「宋巌もおるぞ!」

 それぞれ、そう意気込みを叫んで。球体の中へ、吸い込まれた。

 もしもの万が一の時に逃げて、落ち合う先。それは王宮だった。魯真の手引きで忍び込み方を学んだ馬豪と宋巌は、ばらけた後、別経路で王宮を目指して。指定の場所となった、とある門で落ち合って。

 門番に対し、

「わしの飼っている鳥が王宮に入った」

 と言えば。門番は魯真に通じていた者で、それが秘密の合言葉であることを知っていたので。

「うぬら怪しい奴、尋問してやる。来い!」

 と、しょっぴくふりをして中に導き入れたのである。これは貴志が考えていた設定であるのは言うまでもなかった。

 ともあれ、うまく追っ手から逃れて王宮に入った馬豪と宋巌であったが。中は思った以上に混乱しており、しかも貴志もいると聞き及んでそっちの方に行ってみれば。

 謎の球体。

 そこに吸い込まれる貴志や、悪の女王刹嬉たち。

(何を思って宦官の格好をしているのか知らんが、千載一遇の好機!)

 そう思って勢いのまま球体に飛び込んだのであった。

 球体はみるみるうちに大きくなってゆく。ついには部屋いっぱいになった。それでも収まらず、球体は壁をすり抜け拡大を続ける。

 それを見た兵や官人らは恐慌をきたして逃げ惑う。

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