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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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打敗女王

「そう言えば名を聞いていなかったな。オレは楊勝ようしょう

「僕は李貴志といいます」

「香澄でございます」

「僕はリオン」

「マリーです」

 向こうが名を名乗ったので、こちらも名を名乗った。

 半島人の貴志と内陸の出の香澄が一緒というのは珍しくもないが……。

「金髪碧眼の女性に、褐色の肌の少年も供とは。さすが孫威殿の知り合いだけはあって顔が広いな」

 西の彼方には髪の色に眼の色、肌の色も様々な人々がいる。この大胤城にも、様々な人種の人々が集う。とはいえ、言葉も習慣が違うために、そうそう知り合いになれるというわけでもない。

 皆達者に内陸部の言葉を話す。よほど修練を積んだのだろうと、楊勝は感心していた。

 夜は更けたものの、まだ寝る時間ではなく。厳戒令もあって、王宮は慌ただしかった。

 各所に燭台が置かれて、その灯火が夜闇を払う。

 しかしやはり、王宮の造りは豪奢であった。燭台の灯される白壁の映えること。太い柱の造形の美しさなど。当時の技術・芸術を極限に挑んでいる。

 貴志もマリーも、リオンも、思わず息を呑んでしまう。香澄は平静ではあるが、王宮の造りに感心せざるを得ないようである。

 手燭を持った官人が慌ただしく行き来している。その中のひとりを捕まえ、手ごろな部屋はないかと尋ねれば。どこそこがよいと応えられて、楊勝はうむと頷き。その者に貴志らを託した。

「それがしは任務がある故、ここでお別れだ。孫威殿との再会を楽しまれよ」

 最初とは打って変わって礼儀正しい態度になり。ではと、離れてゆく。

 貴志らを託された官人は、孫威の知り合いと聞いて、感心したように頷き。こちらへと、慇懃に案内してくれる。

「孫威どのは胤の詩聖と言ってもよいくらいのお方でございますからね」

 と、自分もかつて孫威から詩をもらったことを語った。


 王宮荘厳

 許多人 支持支柱

 我們是支柱

 有柱子 王宮閃耀


(王宮は荘厳です。

 多くの人々が、柱を支えています。

 私たちは柱です。

 柱があって、王宮は輝きます。)

 

 官人はすらすらと、孫威からもらったという詩を詠じた。

 その内容は、宮仕えをするものにとっては感涙ものであろう。

「私たちの苦労をわかってもらえるというのは、嬉しいものです」

 と、嬉しそうに言った。

 しばらく歩いて、

「急なことゆえこのお部屋しかありませんが、ここをお使いください」

 言いながら部屋の手燭の火で、燭台に火をつけてくれ。

「私は孫威殿にお知らせいたします」

 と、離れようとした時。貴志は筆記用具を所望して。官人は快く「はい」と頷いた。

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