表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
345/539

打敗女王

 リオンもマリーにしがみつき。

「ひゃああ、大変なことになっちゃったよ」

 と、漏らさざるを得なかった。

 貴志は短槍を奪い取り、それを振るって兵を薙ぎ払う。

「こんな怖い思いをするのも、わからなかったのかい?」

「まあー、世界樹ってさ、ほら、つれないところもあるからさ」

「……やれやれ」

 毎度のことながら、呆れるのも禁じ得ない貴志であった。しかし、どうして穆蘭は、という疑問も膨らむ。

「どうしてなんだ、穆蘭」

 そう問わずにはいられなかった。

「お兄さまがいけないのですわ。みんな、お兄さまのせいですわ!」

 即答だった。貴志のせいだと言うではないか。

「な、なんだってー!」

 短槍でひとり横顔を打ち付け悶絶させながら、思わず叫んでしまった。なんで僕のせいなんだと。

 ふと、野次馬がいないのに気付いた。おそらく兵力をもって周囲に睨みを利かせて、厳戒令を布いているのであろう。

「おい、お前はこの女とどんな関係なんだ!」

 馬豪に宋巌は、寝耳に水と驚いた。まさか貴志らは刹嬉側の者で、下心あって近づいたのかと思わざるを得ない。

「知りません、知りません!」

 貴志だって疑問だらけである。どうにもこうにも、しっちゃかめっちゃかで、なんでこんなことにと疑問に怒りもまぜこぜになってきて、まともな答えなど出来ようもない。

「お兄さまは卑しい匪賊のような真似をなさった。だからあてつけに刹嬉に着くことにしたのですわ!」

「滅茶苦茶だ!」

 さすがに貴志も切れて絶叫した。

 香澄は七星剣を構えて動かない。穆蘭は香澄と対峙しながら貴志にあてるけるが。そもそも誤解のきっかけは、香澄が主の食事をいただこうと言ったことからであり、別に貴志の発言からではないのである。

 しかし穆蘭は香澄より貴志を憎んでいるようだ。

「なんで、どうして! いや、もうやっていられない!」

 貴志は短槍を捨てマリーを抱え。それを見た香澄は素早い動きで七星剣を鞘に納め、帯に差し、穆蘭から離れて、リオンを抱えて。それぞれ駆け出す、逃げ出す。

 穆蘭と対峙している間は襲われなかったものの、離れた途端に香澄にも刃は襲い来る。

「逃がすな!」

 腕を組んで見物していた省欣は叫んで命じて。

 しかし貴志と香澄は刃ひらひらと避けながら、食堂から逃げ去る。穆蘭は四人を睨み据えこそすれ、なぜか追わなかった。

 抜きっぱなしの七星剣は、ぶきみにぎらりと光った、まるで穆蘭の瞳に呼応するかのように。

 馬豪と宋巌もわけがわからないながらも、逃げ出した。

 食堂周辺の路地裏はたいそうな騒ぎであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ