表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
33/539

捏的測験

 この本を役人に教えて、捜査してもらわなければ。と思いながら卓に置いたとき。

「この、鳳凰には別名があるようだね。わかるかい?」

 子どもが不意に口を開いた。

「え、鳳凰の別名?」

「いやな予感がするんだが」

 源龍はまゆをしかめ。羅彩女は木剣を握りしめて源龍のそば、ぴったりとくっつく。

(あれ、ふたりはそんな仲?)

 ふと気になる。

 しかし、子どもが得意げに鳳凰の別名がなんたらとか口走って。貴志もなにか身構えざるを得ないものをおぼえた。

 周囲を漂う鬼たちは人間の心配など気にすることなく、相変わらずふわふわしている。

「あれ?」

 ふと、身が軽いと思うと。なんと、あろうことか、自分の手がだんだんと薄くなってきている。自分そのものが、薄くなっていている。

 徐々に我が身が薄まり、透き通るように消えてゆく。

「本だ。本に吸い込まれている!」

 なんと我が身は薄まり、透き通り、煙のようになってきていると思えば。煙のような我が身が、本に吸い込まれている。

 本はひとりでに開いて、しゅううと聞こえそうなほどに、煙となった我が身を吸い込んでいる。それに伴い、意識も朦朧とする。

「これは夢か。こんなことが」

「結局はこうなるのかよ」

「あ、思い出した!」

 貴志は自分が煙になり、本に吸い込まれる中、これまでのことを、夢の中なのかどうなのかわからないがどたばたを、こんな時に思い出した。

 やがて意識は朦朧として、抗いきれずに深い眠りにつくように、ぷっつりと意識を失った。


「ここは」

 煙になって本に吸い込まれた面々が目覚めると。

 源龍は黒い鎧に身をまとって、得物の硬鞭・打龍鞭をもち。

 香澄は紫の可憐な衣をまといさながら天女のようであったが、腰には剣を佩き。それを抜けば、剣身に七つの球を埋めた七星剣。

 羅彩女は燃えるような赤い衣をまとい、まさに江湖の女侠客の風格を醸し出し。手には桃の木剣を握る。

 貴志といえば、普段着のままで、手には筆一本。

 世界樹の子どもも、辰の子ども服のまま。

 あたりは真っ暗、それぞれきょろきょろして、互いを見合わせ、これからどうなるのかと警戒する。

「皆用意は整った。次に進む」

 どこからともなく声がする。その声が世界樹の声だとなぜか認識できた。

 やがて真っ暗闇に呑まれて、意識もぷっつりと失って。


「お逃げを、皇帝、皇后!」

 けたたましい人々の叫び声が、こだまする。

 次に目覚めたところは。

「ここは、辰の宮殿だ!」

 貴志は周囲を見て叫んだ。入ったことはないが、どのようなものなのか、絵を見せてもらったことはあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ