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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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走向継続

「お食事のご用意ができてございます」

 敷地内を散策する貴志と源龍、羅彩女に、マリーと虎碧は召使いに言われて大広間にゆき。部屋にいた香澄とリオン、龍玉も、言われて大広間にゆく。

 長卓が四角に置かれていたのが、円卓に替わっており。その真ん中に大きなチゲが置かれている。

 野菜や、魚や、小海老、ぷりぷりのほたてがふんだんに。

 龍玉は喜色満面に、待ってましたと機嫌を大変良くして、飛びつくように椅子に着いた。残りの面々も思い思いに椅子に着き、全員揃った。

 志明はいない。仕事があるので、一行だけでで食事を済ませてくれ、とのことだった。

(って言うか、あんまり関わりたくないんだろうなあ)

 貴志は兄を思いやる。

「今夜のお夜食は海鮮鍋かいせんチゲでございます」

 召使いの女性がうやうやしく言う。

「それでは、ごゆっくりとお召し上がりください」

 一同は思い思いに食事を口に運ぶ。昆布出汁が利いて口内にいい感じに沁みて、心も沁みる。

「あー、美味しい~」

 龍玉と羅彩女は満面の笑顔で、帆立や小海老の食感を楽しんでいる。源龍は白身魚を主に口に放り込む。さらにマッコリを喉に流し込んで、ふうー、と大いにひと息つく。

「久しぶりに美味い酒を飲んだぜ」

 源龍も珍しく機嫌がいい。マッコリ自体が美味なのは言うまでもない。それに加えて、何の心配もなく望むがままに飯を食い、酒が飲める幸せを噛み締めていた。

 明日には何があるかわからない。しかし今この時は、いちいちあれこれ考えなくてもいい。

 そんな、一瞬の時に、何よりの幸せを感じられることを知る。

「いやあ、幸せ幸せ」

 部屋で惰眠を貪って、食事に舌鼓を打って。龍玉もご満悦だ。

 貴志はがっつかずに、落ち着いたものだったが。マリーと虎碧、香澄とリオンも、しとやかに食事を口に運び。酒にはあまり口をつけず。杯の端をなめる程度に嗜んでいた。

 源龍と羅彩女、龍玉は特に無遠慮にばくばく食らうから。チゲはあっという間に空っぽになった。しかし、残りの量を見計らって、台車でおかわりのチゲが運ばれる。

 このチゲの入れ替えは、さすがに男衆がやった。

 マッコリの器も言わずもがな、召使いはよく動いて空の器を持って行き、中身の入った器と取り替えてゆく。

 こんな場合では、殿方はよからぬ手の動かし方をするのだが。源龍は召使いの女性に目もくれず、ひたすらに食らって飲んでを繰り返すばかり。貴志も行儀がいいのは言うまでもなかった。

 だから、召使いは安心して、その笑顔も自然と柔らかになり。それがその女性本来の魅力を醸し出していた。

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