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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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走向継続

「それで……」

 貴志は源龍をちらと見据える。

「なんで君もいるんだい?」

「……暇だからな」

「暇って。今日はなんだかんだで忙しかったと思うけど」

 朝、光善寺から下り。昼にふもとに着き、食事をし。それからこの庁舎である。太陽はずいぶんと西に傾き、もうしばらくすれば空は茜色になりそうだ。

「僕を練習台にしようたって、そうはいかないよ」

「つれねえ奴だな」

「普段は人に冷たいのに、調子がいいなあ」

「オレはそういう人間だ」

 それで、源龍がいるということは。

「なかなか良く出来てるねえ」

 と、羅彩女は当然のようにいて、庁舎の造りを見て感心する。

 石材を中心にして作られた石造りのこの建物は、頑健さを感じさせ。その頑健さから威厳も感じられた。

 石材として使用するために様々な形に切り出されて、それが組み合わされて。鳳凰や龍、虎、孔雀など、権威を象徴する生物の彫刻が施されたものもあり。この庁舎まるごと芸術品と言ってもよかった。

「あの鳳凰の天下が出てきそう」

 ぽそっとつぶやく。

「彩女さん、それはちょっと……」

 縁起でもないと貴志は軽くたしなめる。言わんとすることはわかる。人の世の難しさ。立派な建物だからこそ、あの人食い鳳凰の天下が好むような、様々な念も籠っているのは否定しようのない事実だった。

 志明もそれと戦いながら、役目を果たさねばならない。いや、長兄の瞬志スンチをはじめとする四人の兄、そして宰相である父の太定テチョンも同様に。

 将来は貴志もそうしなければならないのだ。が、それよりも、作家という夢を持ってしまって。

 ひとり集中したい時にくっつき虫がいるのは少し残念だが、貴志は気を取り直し。改めて、庁舎を見て回った。

 香澄は部屋で寝台に腰掛け。瞳を閉じ瞑想している。ぴくりとも動かぬその様は人形のようだ。

 それで、その人形のような香澄を、何を思ったのかリオンは、じっくりと眺めて。寝台に上がって、手を持ち上げ。

「うん」

 ちゃんと動くのを確かめて、頷き。首の後ろ、うなじの部分を髪をかき分けて、その滑らかな肌の上から首筋を指で押す仕草をしてみせる。

 こんなことされては、普通の女性は、なにをするの! と騒ぎそうなものだったが。香澄はぴくりとも動かず、リオンにされるがままだった。

 ひと通り香澄の身体を触れ終わると寝台から下りて。懐からなにか掌大の四角いものを取り出す。それは白い厚紙のようであったが。

 リオンは厚紙に向かい、

「香澄、点検終了。異常なし」

 そう言えば。

「ご苦労。このまま幻夢の旅を続けよ」

 と、返ってくるではないか。以前、世界樹の子どもだったマリーが同じようなものを使っていた。(第38部分参照)

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