走向継続
若き男女が仲良く、冒険に身を投じ、生命を揺らす。これこそまさに青春でなくてなんであろう。
宰相の子として、真面目に仕事一筋に打ち込んできたが。少し疲れも覚えだした志明は、弟の奔放さがうらやましかった。
広間の四隅にも、短い槍を持った兵がおり。一同に睨みを利かせている。この集いは憩いの集いではないということだ。
志明は気を取り直して、
「明日の朝、都に向けて出発する。最初に行ったが、それまで外出は許されぬが、敷地内であれば自由にしてもよろしい」
「それはわかったけどよ、飯はどうするんだ?」
源龍が無遠慮に問う。外出もままならなければ、ここでの楽しみは食事だけである。
「食事は決まった時刻にする。そのとき案内させる。……それ以外で、間食は、召使いに言えばなんとかするように取り計らってやろう」
「ほう」
意外と厚遇で、源龍は感心する。
志明は改めて一同を見渡す。目の碧い少女に、金髪碧眼の女性に、褐色の肌の少年もいる。その血筋の源流は、ここ暁星の半島の国からどれだけ遠く離れていることか、想像もつかない。
人の世界とはまこと広いものであると、改めて感じる。
(王様は言われた。世界は広いと。そして時代も変わってゆくと)
志明の内心を察して龍玉は内心ほくそ笑む。
(九尾の狐もいるよ)
ここで九つの尾を出せばどんな騒ぎになるやら。考えただけでも面白い。
「龍お姉さん」
虎碧が肘で少し突っつく。顔に出ていたようだ。
「そこ、何がおかしい」
「あら、あら、ごめんなさい」
龍玉はいたずらっぽく、舌を出して笑って誤魔化す。羅彩女は呆れたとジト目で龍玉を見据える。マリーと香澄、リオンは緊張した空気が少しほぐれたと微笑み合う。
「ともあれ、言いつけを守れば、私も何も言わぬ。解散!」
志明は部下を引き連れてさっさと広間を出た。四隅の見張りの兵も、それに付き従い。後には一同が残された。
(どうにもやりづらいな)
志明はそんな自分に忸怩たる思いだった。
できれば外に出て見回りでもしたいが、こんな時に限って机上での仕事があって、それをこなさなければならない。身の回りを厳重に警護させた上で、執務室に閉じこもる。
香澄ら一同は、ある者は部屋に戻り、ある者は気晴らしに敷地内をほっつき歩く。貴志は古白羅の王城を再現したこの庁舎に関心があり。機会があればじっくり見学したいと思っていたが、まさかこんな成り行きで見学できるとは。
色々あるが、せっかくの機会は生かさねばならぬと、それはそれ、これはこれ、で敷地内を見て回り。
「へえ」
とか、
「ほう」
とか、
内部の造りを見て、感心し。それを見る役人や警護の者、召使いらは、表にこそ出さぬが内心おかしく、微笑んでいた。




