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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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走向継続

「そうか。ならば、そこから動くな。同室の女子にも、同じようにするように言え」

「はい……」

 役目上仕方がないんだろうが、もっと物腰が柔らかくてもいいのに、とリオンは思った。

 しばらくすれば、香澄が出てくる。この世界に戻った時は辰の紫の衣だったが、暁星のチマ・チョゴリを着ていた。偶然か、この服も紫だった。この色と縁があるのか、それとも、世界樹の思し召しか。

 リオンはにっこりして言う。

「似合っているよ」

「ありがとう」

「ああ、そうそう、ここから動いちゃだめなんだって」

「わかったわ」

 入れ替わり、今度は香澄が外で控える。しとやかに佇む様は、一凛の無窮花ムグンファの花を思わせ。見張り番も思わず赤面し視線を外す。

 それから次々と着替えを済ませた面々が出てくる。皆、暁星の服だった。

「いい布使ってるねえ。肌触りもいいし」

「やめなよ、安っぽいことは」

 龍玉のチマ・チョゴリは青く、羅彩女と虎碧は赤かった。先に着ていた辰の服と同じ色だった。

 龍玉はその布地の心地よさに感心して、手を滑らせ。羅彩女は眉をひそめて諫める。

「で、どうすりゃいいんだ?」

 源龍は見張り番に尋ねるが、案内の者が来るのでそれまで待てと返ってきて、はいはいと扉に背をもたれかけさせ腕を組んで、案内を待つ。

 貴志は気を利かせて、苦労を掛けるね、と声をかけ。見張り番もそう言われて悪い気分はせず、これも勤めですから、と礼儀正しく返し。

 改めて背筋を伸ばし、姿勢を正した。

 源龍は黒く、貴志は青。やはり前に来ていた服と色が同じ。マリーは決まった色はないのか、薄桃色のチマ・チョゴリだった。

「お待たせ」

 最後のリオンは、なぜか緑だった。

 同時に召使いが来て、一同は大広間に案内された。

 長卓が四角になるように置かれ、北側の長卓の真ん中に志明が座り。両側に部下、それも武芸達者そうな屈強な部下を座らせ。その左側、東側に貴志を座らせ。

 源龍は貴志のそば、東側の長卓の一番北側に座らされて。他は各自好きなように座ることを許された。

 志明は源龍を警戒し、もし暴れ出したときに部下と貴志に当たらせるつもりなのがよくわかった。

(だから、香澄が一番やべえんだってのに)

 まあ知らないからなと、ここは抑えておとなしくする。貴志も内心苦笑する。

 一同の顔ぶれを見て、志明は改めて、

(くそう、貴志め、なんとうらやましい)

 脳裏に、胸わくわくの、どきどきの、大冒険劇が繰り広げられる。貴志が愛読する武侠小説のような活劇めいた。

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