走向継続
今は暁星の時代とはいえ、それぞれの地域に暮らす人々は、今の国よりも現地の古代の国に心を寄せるものも少なくない。
そこで、古代の国を尊重することで現地の人々に現在の治世を受け入れてもらう方針が執られる。それは様々あるが、その一つが、庁舎をかつての王城に忠実に再現するやり方だった。
慶群は良質な花崗岩がよく採れ、寺や庄屋や商家をはじめとする資産家、王侯貴族の屋敷は石材がふんだんに使用される石造りのものが多かった。
この庁舎も石材が多い、古白羅様式の造りどころか、かつての王城の再現である。歴史に強い関心を示す者は、この庁舎に注目するのも道理であった。
白羅は亡びて長い年月が立ち、古白羅ともなればその跡形は少ない。王城の再現といっても、図面もなく口伝でどのようなものだったのかを伝えているものを探り、持ちうる限りの想像力を働かせて造られたものである。
それでも、古白羅の王城再現に、慶群の人々は目を見開いて感心し。この地に暮らす矜持を取り戻す者も多かった。
また、白羅の光善女王の翼虎伝説もそうなることの大きな要素であった。
「まず!」
色々と想像をめぐらし、どこか顔が腑抜けになってしまう貴志に向けて、志明は大声を張り上げたから。
「あ、はい!」
と、貴志は背筋を伸ばしなおし改めてかしこまり。他の面々はおかしそうにし、源龍は斜に構えて、なにやってんだよと思う。
「それぞれ部屋を用意している。服も用意している。部屋にゆき、服を着替えて、改めて面会する。……ゆけ!」
なめられてはいけないと、志明は目一杯の強気な態度に出る。他はともかく、源龍がなめてなにをしでかすかわからず。なめられないために、とかく強気に出るのであるが。
(オレより香澄の方が厄介だぜ)
源龍自身無駄な騒ぎを起こす気もなく、ムカつくことではあるがここは抑えて、志明に従った。
庁舎に仕える召使いに案内されて、一同は中に入り、部屋に案内される。
源龍、貴志、羅彩女、龍玉は個室だが。香澄とリオン、虎碧とマリーは同じ部屋にされた。
「着替えろったって。まず香澄が着替えなよ。僕は外で待つから」
「そうね、ごめんなさい」
それなりに気を使ってくれているようではあるけど、女子どもといっても男と女を同室にしたら、結局こうなるんだなあ、とリオンは心の中でひとりごちながら。部屋の外に出る。
広い庁舎の奥の方に、部屋は並ぶ。短い槍を持ち、腰に剣を佩く見張り番が睨みを利かせている。リオンと少し目が合ったが、見張り番は表情一つ動かさない。一方、リオンは軽く会釈する。すると、相手が口を開く。
「何をしている」
「いや、同じ部屋の女の子が着替えてるんで、外にいるんです」




