表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
313/539

走向継続

 今は暁星ヒョスンの時代とはいえ、それぞれの地域に暮らす人々は、今の国よりも現地の古代の国に心を寄せるものも少なくない。

 そこで、古代の国を尊重することで現地の人々に現在の治世を受け入れてもらう方針が執られる。それは様々あるが、その一つが、庁舎をかつての王城に忠実に再現するやり方だった。

 慶群キョングンは良質な花崗岩がよく採れ、寺や庄屋や商家をはじめとする資産家、王侯貴族の屋敷は石材がふんだんに使用される石造りのものが多かった。

 この庁舎も石材が多い、古白羅様式の造りどころか、かつての王城の再現である。歴史に強い関心を示す者は、この庁舎に注目するのも道理であった。

 白羅は亡びて長い年月が立ち、古白羅ともなればその跡形は少ない。王城の再現といっても、図面もなく口伝でどのようなものだったのかを伝えているものを探り、持ちうる限りの想像力を働かせて造られたものである。

 それでも、古白羅の王城再現に、慶群の人々は目を見開いて感心し。この地に暮らす矜持を取り戻す者も多かった。

 また、白羅の光善女王クァンソンヨワン翼虎伝説イグホでんせつもそうなることの大きな要素であった。

「まず!」

 色々と想像をめぐらし、どこか顔が腑抜けになってしまう貴志フィチに向けて、志明チミョンは大声を張り上げたから。

「あ、はい!」

 と、貴志は背筋を伸ばしなおし改めてかしこまり。他の面々はおかしそうにし、源龍げんりゅうは斜に構えて、なにやってんだよと思う。

「それぞれ部屋を用意している。服も用意している。部屋にゆき、服を着替えて、改めて面会する。……ゆけ!」

 なめられてはいけないと、志明は目一杯の強気な態度に出る。他はともかく、源龍がなめてなにをしでかすかわからず。なめられないために、とかく強気に出るのであるが。

(オレより香澄こうちょうの方が厄介だぜ)

 源龍自身無駄な騒ぎを起こす気もなく、ムカつくことではあるがここは抑えて、志明に従った。

 庁舎に仕える召使いに案内されて、一同は中に入り、部屋に案内される。

 源龍、貴志、羅彩女らさいにょ龍玉りゅうぎょくは個室だが。香澄とリオン、虎碧こへきとマリーは同じ部屋にされた。

「着替えろったって。まず香澄が着替えなよ。僕は外で待つから」

「そうね、ごめんなさい」

 それなりに気を使ってくれているようではあるけど、女子どもといっても男と女を同室にしたら、結局こうなるんだなあ、とリオンは心の中でひとりごちながら。部屋の外に出る。

 広い庁舎の奥の方に、部屋は並ぶ。短い槍を持ち、腰に剣を佩く見張り番が睨みを利かせている。リオンと少し目が合ったが、見張り番は表情一つ動かさない。一方、リオンは軽く会釈する。すると、相手が口を開く。

「何をしている」

「いや、同じ部屋の女の子が着替えてるんで、外にいるんです」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ