走向継続
リオンは壁に背をもたれ掛けさせて、すうすう寝息を立てて眠っていた。
源龍は腕を組んで目を閉じ瞑想するように静かだった。香澄もまた膝の上に手を置いて、瞑想するように目を閉じ静かにしていた。
羅彩女は窓から外を眺めて、ぼーっとしている。貴志も窓から外を眺めている。
街は人が行き交い、賑わいを感じさせた。兄はよくこの地域を治めているようだった。父と母は厳愛をもって子を育てたが、親の教えがよく生かされているようだった。
「いい街そうだねえ。いっそ逃げ出して、この街にいついちゃおうか」
「そんなことをしなくても……。王様とお会いしたときに、その希望を言えばいいんじゃないですか?」
羅彩女はあらぬことを口にし、貴志は苦笑する。
「王様ねえ。あたしらみたいな下賎の者に会ってくれんの?」
「必要とあらば。それに」
「それに?」
「自分で言うのもおこがましいですが、僕はこの国の宰相の子ですが、あなたを差別したことがありましたか?」
「そうだねえ」
今度は羅彩女が苦笑する。
ふと、男同士、あるいは女同士手をつないで歩くのも見られた。同性愛者だ。この者らもよく差別され、表を歩けなかったが。
へえ、と羅彩女は感心の声を上げた。
「時代は変わってきつつあります、いや、変わらなきゃいけないんです。温故知新で良いものは残しながら、改めるべきは改めて」
「いいこと言うねえ」
羅彩女は感心しながら頷く。
しばらくして、「出ろ!」という志明の声がして。一同は外に出れば。牛車は庁舎の敷地内に入っていた事を知る。皆結局寝入ってしまっていて、顔を見合わせて笑い合う。
庁舎は二階建てで、広く造られている。志明の生活空間もあれば、それなりの集団客が寝泊まりできるようにもなっている。
志明は部下を引き連れ、なるべく威厳たっぷりな態度をとり。牛車の前に一同を並ばせる。
「明日、漢星に向け出立する。外出は一切許さぬが、敷地内では自由と安全を保障しよう」
と、言い。それから、弟の貴志に目をくれる。源龍は格好だけ起立して知らん顔だが、おとなしくしているのでまあよしとして。変にそわそわしている弟に、志明は苦笑する思いだった。
「ここはかつての古白羅の王城跡だからな。散策したくてうずうずするだろう、貴志よ」
「う、あ、はい……」
貴志は心の中を見透かされて、気恥ずかしい思いをしながら頷く。香澄は好もしそうに微笑む。
志明は慶群に派遣され群守としてこの地に勤める。その拠点となる庁舎は、古白羅の王城跡に建てられていた。




