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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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捏的測験

 子どもが語るところによれば、鬼には悪い鬼と良い鬼があるそうだ。それと、

「普段は人を雇ってここで担々麺作ってるんだよ。羅彩女はおかみさんさ」

 とも、子どもはこの店についても語る。

 源龍も香澄も身寄りなく流浪の身だったが、羅彩女と出会い共同で担々麺屋をやっていると。

 貴志は話を聞きながら相槌を打つが、源龍も香澄もそれには触れたくないのか黙っている。それを見て、無理にふたりと話すことはしなかった。

 壁にかけた燭台にも同じように火打石で火を灯し。食堂はほのかに明るくなる。

「できたよ」

 言いながら出てきて羅彩女は木剣だけを持ち、鬼が浮遊しながら料理の乗った盆を上に乗せているではないか。

「しっかり利用しているんだなあ」

「皆そうだといいんだけど、タチの悪いのもいるから。だから桃の木剣が必要なんだ」

「言ってるそばから……」

 盆を乗せた鬼のひとつが羅彩女に襲い掛かって。木剣をふるい鬼を消滅させさまに盆をぶんどって料理を守った。

 それから卓に料理が並べられた。

「おお……」

 貴志は感心して料理を見据えた。

 炒めた餃子が一皿に五つ。炒めた餃子ということは、水餃子ののこりを使って出したのだろう。辰で餃子とは水餃子のことを指す。炒めた餃子は残り物の再利用である。

「あッ!」

 目をいからし牙をむき出しにした形さだまらぬ鬼が貴志に襲い掛かり。咄嗟に裏拳で弾いたが。弾かれただけで、今度は源龍に襲い掛かった。それも拳骨で弾いたが。消えることはなかった。

「やれやれ」

 羅彩女は木剣をふるって鬼にぶつけて、消滅させた。

「鬼は木剣でしか倒せないんですか」

「まあね。で、木剣を使えるのはあたしだけ。なぜだか、他のやつが持っても効かないんだよ」

「ええ?」

 なんだそれはと貴志はややきょとんとし、子どもは、

「すべては世界樹のお導き」

 などと言ってのける。

 餃子の他には、もやしものだ。

「あ、これはナムルですね」

「そうだよ、あんた暁星の人だからね」

「ああ、ありがとうございます」

 もやしを塩ゆでして、ごま油や調味料で和えた作り置きの料理で、暁星でよく食される。材料はもやしだけでなく、他の野菜ももちいられる。

「もやししかなかったから、これで堪忍ね」

 と羅彩女は言い。貴志はおそれいって、とんでもないと返す。

 あの娼婦の言った通り、羅彩女は義侠心をもった女侠だった。

 皿と水の入った杯が並び、箸もおかれて。羅彩女も座り。

「はい、みんな、手を合わせて」

「いただきます」

 行儀よく手を合わせてから箸を持ち、食しはじめる。

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