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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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走向継続

 誰も無駄口を叩かず、食事を口にし。すべてたいらげたあと、食器をまとめ、隅に置き。

「ふわあ」

 と、誰からともなくあくびをし。ずっと寝ていた源龍と羅彩女に、瞑想をしていた香澄すら、無言で身を横たえ。寝息を立てて。

 貴志と龍玉、虎碧にマリーとリオンも、燭台の火を消し。思い思いに身を横たえて、眠りについた。

 眠りの中で、また再びあの夢の闇の中で漂うような浮遊感があった。目に見えるものが幻とすれば、何も見えぬ闇の中は、夢としたものであろうか。

 幻と夢を行き来する者たち、源龍と貴志、羅彩女のような転生者にとって、この時が束の間の休息であった。

 皆、何かの夢を見たということもなく、朝になって窓から陽の光が差し込む時刻に目が覚めて。瞳を開いた。

 それと同時に、

 家来を引き連れた李志明がどかどかどかと足音も高らかに庵に入って来た。

 光善寺のある光善山クァンソンサンは標高もそこそこにある山で、役場のある街の平野部から上るのは、道こそ比較的整備されているものの、時間もかかりやはり足に負担のある労作業なので、信仰を集めているとはいえ、並の者は好んで寺に行くことはなかった。

 逆に寺に行く者はよほどの信心深い者か、よほどの火急の用がある者であった。

 志明らは後者で、夜明け前に、松明の火を頼りに、暗い山道を登って、である。火の消えた松明を持つ者もちらほら見受けられた。

「に、兄さん、お久しぶりです……」

 貴志はそんなことを、恐る恐るつぶやいた。

 志明は以前の時とは違い、怒っている様子はないが、我が目を疑うかのように戸惑いを隠せないでいた。

(オレは日々真面目に勤めを果たしているのに、貴志ときたら、女性たちと一緒に……!)

 あらぬ想像が起こり、変にやるせなくなる。

 総勢八名。うち、男が三名で女が五名。

(女の方が多い)

 そう思うと、ますますやるせない。できれば自分も混ざりたいくらいだ。

「ちょっと、助平なこと考えてないだろうね」

 尻尾をすかさず隠した龍玉がからかい気味に鋭く志明に突っ込む。虎碧は「龍お姉さんったら」と小声でたしなめる。羅彩女も、すこし、おかしそうだ。

「幼い系から熟女まで。ぱっと見選り取り見取りだもんねえ」

「まあ、まあ、この人たちも戸惑っていますし。冗談はここまでにした方が」

「うふふ」

 優しく諫めるマリーの言葉も終わらぬうちに、香澄は笑みをこぼす。

 源龍は黙って様子見である。相手が荒っぽいことをせねば、出番はないと控えていた。で、貴志は、この変な雰囲気の中でどうしようと兄と同様に戸惑い、咄嗟に言葉が出ない。

「どれどれ、わしの出番かの」

 ぬっと姿を現したのは、元煥であった。

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