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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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永無止境

 そこにたくさんの子どもたちがいる。

 そしてその子どもたちの中に、皇后や皇太子に公主、関焔が混ざっているではないか。

 関焔と公主は他の子どもたちと遊び。皇后と皇太子は木陰でそれを微笑ましく眺めていた。

 これはどういうことか。

「なにやってんだ?」

 源龍と貴志ら他の面々は、香澄とマリーがリオンの目を覗きこむ仕草を不思議そうに眺めている。

「そろそろ、この世界ともお別れね」

 香澄はぽそりとつぶやく。

 風が吹く。

 船縁越しに下界を眺めている皇后や皇太子に公主、皇族たちは、なんと、風が吹くにつれてその姿がぼやけてくるではないか。

 同時に下界までもが、なんだかぼやけてくる。

「ん?」

 羅彩女は目の前に降ってきたものを目にし、それをつまむ。それは木の葉だった。なぜか木の葉が空から雪のようにひらひらと舞いながら降ってくるのである。

「世界樹の葉……」

 香澄はひとつ、つまみとり。ぽそりとつぶやき、空を見上げる。他の面々も空を見上げた。

 世界樹の葉はひらりひらりと、無数に降ってくる。

 そうかと思えば、金色こんじきの羽毛が降ってくる。そうかと思えば、白色はくしょくの羽毛も降ってくる。

 木の葉と金色の羽毛と白色の羽毛が雨あられと降ってくる。

 源龍は金色の羽毛を、貴志は白色の羽毛とひとつ、つまみとった。その間にも、各人の頭に、肩に乗り。足元に降り積もってゆく。

「こりゃあ……」

「白い羽は、まさか、翼虎の?」

「金ぴかのは、あの糞鳳凰のか」

 それぞれがそれぞれに、忌々しい災厄としての鳳凰の姿を、威厳と慈悲を備えた純白の翼虎の姿を思い浮かべる。

 木の葉、金色の羽毛、白色の羽毛がないまぜに降り注ぐが。やがて木の葉と金色の羽毛は数を減らし。

 ついには、白色の羽毛だけとなった。

 それに伴い、霧が、いや空にいるから、雲がかかってくる。

 白羅の翼虎伝説の時代に飛ばされた時は雲に乗れたが、この世界の雲は乗ることが出来ないようだ。雲であると同時に霧として視界をあっという間に白く包み込んでしまった。

「あれ?」

 源龍と貴志、羅彩女に龍玉、虎碧は、思わず間抜けな声をあげてしまった。

 自分たちは、例の草原にいる。

 陽光照らす、緑も眩しいだだっ広い草原の中、世界樹の大樹がそびえ立ち。その周辺をたくさんの子どもたちが囲んで、思い思いに遊んでいる。

 その中に、公主と関焔がおり、子どもたちと一緒に駆けっこをして遊んでいる。それを木陰から皇太子と皇后、そしてリオンとマリーに香澄が優しい微笑みで見守っている。

「色々大変だったけど、ここでゆっくりしたらいいよ」

「ありがとうございます」

 そんなやりとりが聞こえる。

(お母さん……)

 虎碧は母親のマリーを見つめる。どうして、母と娘は別々になっているのだろうか。

 一同は顔を見合わせて、木陰までゆく。

 香澄は一同を見つめて微笑み。

永無止境ヨンウチィチン)」(終わらない)

 とささやいた。

(終わらない、ったって……)

 一体全体、世界樹は何をさせたいのだろう。

(適当に賽を投げて、後は成り行き次第だなあ)

 貴志はふとふと思った。


永無止境 終わり

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