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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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永無止境

「もういい、話さないで」

 香澄は声をかけ、源龍は無言で首を横に振る。

「生まれ変わったら……」

 そこまで言って、ぴたりと言葉が止まる。ぎょろりとした目つきから力が抜け、眼目に虚空が漂い出す。

 香澄はその目に手を添え、瞼を閉じてやった。

 関焔は、死んだ。

 その様子を眺め、貴志はおかしな、不思議な気持ちに囚われる。自分の作品世界に放り込まれ、自分が創作した登場人物が死ぬのを見せられるのは、本当に不思議な気持ちだった。

 もちろん話の筋からは大きく離れている。どうしてこうなるのか。

 耳をつんざく、鳳凰の鳴き声。まだ宮廷上空を漂っている。風に乗り、のんびりと下界を見下ろしている。

「反魂玉の結界がなかったら、ひとたまりもなかったぜ」

 画皮は愛おしそうに反魂玉を優しく撫でる。骸骨と首無しが関焔と相打ちになったことなど、気にも留めない。人狼も平然とする。

 しかしこの反魂玉も一体何なのだろうか。なぜ出してもいないものが、出てきて不思議な力を発揮するのだろうか。

 神か仏か、それとも魔の仕業か。人知を超えた何かが、何かをしている。そう、世界樹は自分たちに何をさせたいのだろうか。

 辻褄もへったくれもない、混沌としたこの状況かに放り込まれて。

「さあーてと!」

 画皮は得意になって叫ぶ。

「次はお前らだ!」

 人狼も高笑いし、

「復讐だ!」

 などとほざく。

 とは言え、さてこいつらはどのように仕掛けてくるか。真正直に相手をしないなどと、変なところで正直な言動をとるものだったが。

「お前たちは何者で、どうして私たちを憎むのだ!」

 皇太子は勇気を振り絞って言うが。

「ふん、答える必要はない」

「あっかんべーだ!」

 という風に、相手をなめ切って真面目に相手をしない。

「強いて言えば、楽しいからだな! なあ人狼さんよ」

「そうだな、楽しいからだな。人間の無様さは。なあ、そう思うだろう、九尾の狐さんよ!」

 人狼は龍玉を見据えて叫ぶ。見破られていた。

 龍玉は観念し、隠していた九つの尻尾をさらけ出す。それを見る皇族は声を上げて驚く。しかし。

「落ち着きましょう!」

 皇太子だった。

「この人の正体が九尾の狐であろうと、害意がないのは今までの事でわかるでしょう」

 そう皇族に呼び掛ける。皇后も皇太子に賛同の意を示す。

 もしばれたらと思い龍玉は尻尾を隠していたが、見破られたとなれば隠すに隠せない。やはり同じあやかしの者たちである。

虎碧は龍玉のそばに寄り添い、臨戦態勢をとる。羅彩女も周囲に気を配り。マリーとリオンも、皇族らのそばに寄り添い。落ち着くよう促す。こんな時だからこそ、いつもより冷静にならないと、と自分にも言い聞かせる。

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