永無止境
「お可哀そうに」
香澄は自らが渡り合う骸骨、胤帝にそんなことをまたつぶやいた。七星剣は閃くも、かすりもしない。それは反魂玉の力によるものか、それとも……。
その一方で、源龍も打龍鞭を振るい、風を起こし唸らせるが。なぜかこれも、首無しにかすりもしない。
「けけけ」
と、抱えられた首が源龍をあざ笑う。
さてこの勝負も、どのように転ぶのか。という時であった。
「うおおおおーーー!!!」
というけたたましい雄叫びが轟き。何事かと思えば、それは大刀を握る関焔であった。
全速力で突っ走り、人狼と画皮目掛けて突進してくるではないか。
「ちっ、馬鹿め」
人狼は忌々しく舌打ちし、自分に向かってくる関焔を睨む。画皮も冷たく睨む。
その途端に、骸骨と首無しは咄嗟に相手から離れて間合いを取るや。突っ込んでくる関焔向け駆け出す。
源龍と香澄は追うが、間に合わない。
「畜生! なんて身のこなしだ!」
源龍は忌々しく叫び。
叫び終わるころには関焔と骸骨、首無しは接近し。一瞬のうちに激しく渡り合い。大刀は唸りを上げ、なんと骸骨の首を刎ね。次いで首無しの胴と腰を一刀両断する。しかし、関焔も拳や脚を急所に食らって。ふらつき。
三体そろって倒れこんでしまった。
骸骨と首無しはもうぴくりとも動かない。源龍と香澄は関焔のもとまで駆け寄り。人狼と画皮は動かず、高みの見物を続ける。
「おい、まだ生きてるか!」
「無茶なことを」
倒れた関焔に源龍と香澄は声をかける。そうすれば、関焔は、まだかろうじて生きているようで。口をぱくぱくさせる。
「オレは、オレは……」
関焔は声を必死の思いで絞り出す。
「正義だの大義だの、維新だの、本当はどうでもいいんだ。気の合う仲間たちと馬鹿話が出来たら、それでよかったんだ。だけど、正義だの大義だの、維新だのが、仲間と仲間との馬鹿話を奪った……」
満足に身体も動かせないが、目だけはぎょろりと人狼を睨む。
「オレはそいつらが憎い!」
「はははッ!」
関焔の必死の叫びに、高笑いで人狼と画皮は答えた。
「見抜けなかったお前らが馬鹿なだけだ!」
関焔はぎょろりと人狼と画皮を睨むが、もう身体は動かない。骸骨と首無しの拳や脚は、頭や腹にもろ入って。脳や臓物をずたずたにしたこと、想像に難くない。となれば、もう命は長くあるまい。
それでも、関焔は必死の思いで大刀を振るい。骸骨と首無しを仕留めた。その執念の燃え盛る様もまた想像に難くなかった。
「あ、ああ。オレは難しいことはわからんが。オレは馬鹿でよく人から嫌われた。だから居場所や友達が欲しかった、寂しかった。北娯維新軍はそんなオレの心の穴を埋めてくれた、希望だった……」




