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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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永無止境

 源龍は忌々しく舌打ちしながら、遠くに見える鳳凰を睨む。

 皇帝が暴政を働き、死人を蘇らせる反魂術で人不足を補い。そこから、この鳳凰の降臨という大災厄につながった。もし最初から善政を布けば、こんなことにならなかった。

 などと今さら言っても詮無い事だが。大きな災いは、所詮人が呼び寄せるのだというのを、源龍はしみじみと感じていた。

「鳳凰と、天下と対峙するのは、逃れられない宿命ということか」

 貴志も観念して、鳳凰、天下を見据える。

 いかに巨大とはいえ、一国の都は一羽の鳳凰によって混乱を極めていた。火は燃え広がるばかり。人々は逃げ惑うばかり。そんな燃え広がる火炎をものともせず、鳳凰の天下は、美味そうに人をついばんでいた。

 宮廷は今のところ無事だが、それもいつまでもつか。

「もう滅茶苦茶」

 羅彩女は苦々しくつぶやく。ここまで来てしまったら、もう人の手ではどうにもならぬ。災厄が通り過ぎるのを待つしかないが。それまでに自分たちも助かる保証はない。

「宮廷に行きましょう」

 香澄だった。

 皆一斉に香澄に目を向けた。

 彼女は照れも戸惑うそぶりもなく、皆の視線を澄んだ瞳で受け止める。

 一同は頷いた。宮廷に行くことが決まった。

 リオンは船を動かし、宮廷のたくさんある中庭のひとつに船を下ろした。

 皇族たちは小屋から出て、宮廷に戻ったことに戸惑っていた。

 香澄と源龍に貴志は船から下り。羅彩女と龍玉、虎碧は船に残って、皇族やリオンとマリーを守る。

 混乱を極める江北都にあって、宮廷だけはその混乱の外にあるようだった。反魂玉をもちいて結界を張っていると画皮は言っていたが。

 突然、何かが勢いよく飛来し。源龍は打龍鞭で打ち返した。

 飛来物は、透明な玉だった。

「反魂玉!?」

 貴志は思わず声を出した。打たれた反魂玉の行く先には、画皮がいて。玉を受け止めた。そばには人狼と骸骨、首無し。

「よく戻って来たな」 

 人狼は一同を舐めまわすように眺める。

「あの時お前を助けるんじゃなかったぜ」

 源龍は打龍鞭を構えて、いつでも飛び出せるように身構える。白羅の翼虎伝説の時代に飛ばされて、人狼と遭遇したときに少しばかり哀れに思って危機に陥った人狼を助けたが。

 それで恩を感じ改心をするようなことはなかったのは、今を見ればわかる。

 いたいけな若者をそそのかし、絶望の淵に突き落とし、そして無残に死なせる。獣の心を以ってせねばなしえぬ業である。

「あれはオレばかりが悪いんじゃないぜ、見抜けなかったあいつらが間抜けなだけさ」

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