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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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永無止境

 それは人の姿をした狼に、軍師の秦算。秦算は手になにやら透明な拳大の玉を持っていた。その玉の中は、ゆらゆらと炎が揺らめいていた。

「と、頭領!」

「犬野郎、またてめえか!」 

 ふたり同時に叫んだ。それから、源龍は、はっとする。

「犬野郎が、頭領!?」

「その通り!」

 人間の姿は、白羅の翼虎伝説の時代に出会った時とはまったく別人だったのに。その人間の姿を変幻自在に変えることが出来るとは。

 関焔は唖然とするばかりで、人狼と源龍の話が飲み込めないが。想像を絶する状況に遭遇して、理解力は大幅に落ちて。これらの関係を探ろうという気持ちが湧かなかった。

 骸骨と首無しはそれにおかまいなく女たちと渡り合っている。しかし石狼が人狼だったことは驚かされた。

 江北都は騒然として、阿鼻叫喚やむことなく耳に飛び込む。止める者も皆無に等しく、人は恐怖に駆られて心をなくして獣になってしまった。

 守備兵も落ち着かせようとしたが、功を奏さず。諫めたがゆえに憎しみを受け、獣と化した人々に討たれる有様。

 もはや暴徒である。人民は暴徒となって、江北都を破壊してゆく。

 宮廷の周囲は何か結界でも貼られているのか、暴徒が来ないのは不幸中の幸いであったが。それもいつまで持つのか。

 ともあれ、それまでの溜まりに溜まった鬱積は抑えがたい。胤帝の暴政、屍魔の出現。北娯維新軍が落ち着かせたと思ったら、また屍魔。

 打ち続く試練に多くの人民は人としての心を破壊されてしまった。

「うわああー!」

 けたたましい悲鳴轟く中、関焔はある悲鳴を耳にして、はっとその方へと振り向けば。仲間が人民に襲われて、無残に殺されていた。

「落ち着け、落ち着け!」

「こんなことをして何になる!」

 関焔に近しい仲間たちは、人民たちを落ち着けようと諫め、説得をするが。聞いてもらえず。それゆえに憎まれ、襲われ、殺されて……。

 数も少なく、衆寡敵せずで少々の抵抗など意味をなさず。ぼろ布のような無残な屍にされるばかり。

「あ、あ、あああーーー!!!」

 関焔は大口を開けて叫んだ。悲鳴だった。寝食を共にし、共に酒を酌み交わしながら志を語り合い、時に羽目を外して馬鹿話に興じた仲間たちが。無残に殺されてゆく。

 それは関焔の心を八つ裂きにするに十分だった。

「ふはははははははははッ!」

 関焔の悲鳴に割って入るようなけたたましい笑い声。

 石狼、もとい人狼と、秦算だった。

「!!」

 その笑いに弾かれるように。香澄と渡り合う胤帝、もとい骸骨と、龍玉と羅彩女と渡り合う伴顕、もとい首無しは。跳躍して間合いを取って離れて、人狼と秦算のもとまで駆け寄り、並ぶ。

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