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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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永無止境

 しかし源龍の拳がぶつけられて、もんどりうって倒れて。他の者たちは怖じて逃げ出した。

「馬鹿野郎!」

 羅彩女は叫んだ。こんな時にも欲求に突き動かされる人間というものに、哀れさや儚さをふくんだ怒りを禁じ得なかった。

 香澄は無言で落ち着いたものだったが。

「誰が反魂術を使ったのか……」

 ぽそりとつぶやく。屍魔が出たということは、反魂術を用いたが者いるということだ。伴顕は殺されてしまった。他の者が、術を用いたことが考えられた。

「それも、意図的に屍魔として死人を蘇らせて」

 そう、完全な悪用である。伴顕は皇帝の命で、人不足を補うためであり。最初から悪意があったわけではない。

 宮廷に近づくにつれて、屍魔のひどい姿も視界に入って来た。悲鳴にも包まれる。

 ヴヴヴ……。

 何かの虫の羽音のような声を漏らし、屍魔らは源龍たちを認めて。襲い掛かる。これを得物を以って、粉砕し、あるいは首を刎ねて始末してゆく。

「踏ん張れ! あと一息で我らが主導権を握れるぞ!」

 混乱の悲鳴の中で、関焔の叫びが聞こえた。彼らの奮闘に喚起されて、他の守備兵も奮い立ち屍魔と渡り合った。非戦闘員の人民でも、勇を鼓して落ちていた武器を拾って、屍魔と渡り合う者もいた。

「たいしたもんだぜ」

 源龍がぽそりとつぶやけば、香澄は微笑みを見せ、羅彩女もそれなりに頷きながら得物の軟鞭を振るって屍魔の頭を粉砕した。

「おおー、お前たち。助太刀に来てくれたのか、ありがとう!」

 関焔は源龍らの姿を認めて、ありったけの大声で感謝の言葉を述べた。

「うるせえ、集中できねえだろうが!」

 などと源龍は言うものの、それが照れ隠しなのは見てわかった。関焔は怒るでもなく、

「ははは、結構結構。そりゃあ!」

 と、喜々として大刀を振るった。

 香澄と羅彩女の奮闘も加わって、形勢は人民側に有利になってゆき。屍魔はその数を減らしてゆき。

 ついには、最後の一体が源龍によって仕留められ。屍魔は完全に片付けられた。

「よし、次は人間の番だ!」

 混乱が生じたことによる恐慌を落ち着けさせるのだ。心ある者たちは、必死になって落ち着けと呼びかけて回った。

 奮闘の甲斐あってか、状況は徐々に落ち着きつつある。皆そう思いたかったが、そうは問屋が卸さない。

 宮廷から、

「ぎゃあああああーーー!!!」

 というけたたましい悲鳴が轟いたと思えば、宮中の人々が一斉に算を乱して雪崩を打って飛び出すのである。

「頭領か!」

 関焔は大刀を握る手に力を込めて身構えたが。雪崩を打って飛び出す人々の中にあらぬものが紛れ込んでいた。

「なんじゃこりゃあ!」

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