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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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永無止境

「関焔!」

 人が豆粒程度にしか見えないが、目を凝らせば得物をぶんぶん振り回して屍魔をぶった切っている豪傑風情の者があった。これは間違いなく関焔であろう。

「頭領や秦算殿より、屍魔をなんとかしよう。皆、頑張れ!」

「おう!」

 関焔がそう叫べば、仲間も呼応する。

 石狼がその名の通りの狼になり、なぜか秦算も落ち着いて石狼に従い。石狼は高笑いをしながら部屋を飛び出し。その駆け足早く、関焔は置いてけぼりにされてしまって。もう目にすることはなかった。秦算も同じように石狼とともに関焔を置いてけぼりにしてしまった。

 どうしたんだと混乱したが、外の混乱を聞き及び、手近にいた仲間たちとともに、外に飛び出した。

 関焔も混乱していたが、どうにか冷静さを踏ん張って取り戻し、外に飛び出た次第だった。

「なんて奴だ」

 源龍は悔しいながらも、関焔に感心せざるを得なかった。お調子者の馬鹿だと思っていたが。この危機の時に得物を振るって奮闘するなど、なかなかできることではない。

(この人は本当に維新を志していたのか)

 貴志も感心しながら船縁越しに関焔奮闘を眺める。香澄も静かに見つめる。羅彩女、龍玉に虎碧も、どうする? と、顔を見合わせる。

 関焔の奮闘は見上げたものだが、混乱は大きく。屍魔も徐々に増えてゆくが、それ以上に恐慌が江北都を包むのが早かった。

 宮廷を囲む人民たちは突如現れた屍魔に驚き逃げ惑うが、視界を広げれば、広い範囲で人と人とが争い渡り合う光景が認められた。

 どさくさに紛れて、というものだった。

「人間って奴は、こんな時にも」

 龍玉は毒づく。

 しかし、関焔はともかく、石狼と秦算はどうしたのだろうか。まさかあらぬことになっているとは知らないので、これは素直に疑問に思った。

「どうする、また下りるのかい?」

「言うまでもない!」

 ということで、船は高い建物のそばまで移り。源龍は船縁を飛び越え、屋根伝いに地上へとおりてゆく。

 それに香澄と羅彩女も続くが。貴志と龍玉、虎碧は皇族やマリーとリオンと守るために残った。

 貴志は下の様子を眺めながら、ふところの筆、天下に触れた。今度は何を書かされるのか?

「まったくひでえもんだぜ!」

 源龍は駆けながら吐き捨てる。一旦騒乱は鎮まり、これから復興だというときにまた騒乱。見よ、人と人とが獣のように争い、絶望の淵でもがく、目をそむけたくなる有様を。

 ともあれ、優先すべきは屍魔である。屍魔を片付ければあとはなんとかなる。

「女だ!」

 そんな雄叫びがあって、完全に理性をなくした男たちが一斉に襲い掛かった。羅彩女と香澄を手籠めにしようというのである。

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