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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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捏的測験

「さっきの子どもは」

「そうだよ、世界樹の子どもだよ」

「じゃあこれは夢……」

「夢も現もない、実在それ自体さ。……それに」

「それに?」

「見えないかい?」

「え?」

 ふと、きょろきょろすれば、うっすらと、なにやら半透明ななにかが見えて、周囲をうろうろしている。

「ん?」

 それは得体のしれないもので、正体もつかめない。うっすらとした半透明ななにかは、かたちもさだまらず貴志と羅彩女の周囲をふわふわ浮きながらうろうろしていた。

「これは」

!?」

 見れば時折人の形をしたかと思えば、犬や猫に、牛や豚、鶏だとか雀に鴉に魚と、さまざまな形になってゆく。さだまった形を持たず、変幻自在だ。

(死者の魂か)

 死者の魂が成仏せずに現世に残り、(幽霊)として彷徨っているということなのか。

 で、どうしてそれが見えるのか。

「!!」

 浮遊する鬼のひとつが、魚の形になったと思えば、大口を開け、その大口には鋭い牙がならび。

 くわっと、目をいからして羅彩女に襲い掛かる。

 貴志はあっと思ったが、咄嗟の事にて反応が遅れたうえに動けない。だが羅彩女は平然として、いつの間にか木でできた木剣をもち。

 迫りくる鬼魚の大口に木剣を突き立ててれば、鬼魚はぶるぶるふるえて、泡となって弾けて、消えた。

「……あ、それは桃の木の木剣ぼっけんですね!」

「ご名答」

 羅彩女は木剣を肩に担いで、不敵な笑みを浮かべる。その時に、ふと、

(源龍みたいな雰囲気だな)

 などと、なぜか考えて。それが自分でも不思議だった。

 桃の木は瘴気や悪い鬼を払い清める効能があり、桃の木を彫ってつくられた桃の木剣は、それらに対しての武具として使用され。出家の道士もたずさえている。

「そうか、桃の匂いは」

「よく匂うだろう」

 羅彩女は世界樹にゆき、桃の木剣を得物として得たようだ。それが貴志には匂って、ここまで導かれた。

「よくわからないけど、世界樹に行ってから、こんななっちまってね」

 そう語るものの、特に感慨もなく、江湖の女侠客のような雰囲気をただよわせながらどこか冷淡なものを感じさせる。

 その一方で、貴志の脳裏には、抑えられていた世界樹のことが一気に閃き記憶が明滅するように弾けて湧き出すように思い出された。

「あなたには鬼が見え、あなたの近くに来たら同じように鬼が見える、ということですか?」

「そうだね」

「世界樹は僕らになにをさせたいのでしょう?」

「さあ」

 羅彩女はやはり冷淡だった。

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